川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

オリオンの殺意より

夜な夜なロマンポルノを物色する壮年。聞くところによるとロマンポルノ10本のうち、秀作の割合は1本あるかないかだそうで、このミステリータッチの作はその1割以下に含まれるとされている。『オリオンの殺意より 情事の方程式』(1978・監督 根岸吉太郎)をFANZA動画で。

【以下、ネタバレあり。役名では呼ばず、俳優の名で呼んでいます】

まず主役のふたり、山口美也子と加納省吾。僕の観ている流れからいって、あ、『おんなの細道 濡れた海峡』のストリッパーだ、『青い獣 ひそかな愉しみ』の受験生だと思ってしまう。調べてみると、加納という人は上記2作と『ヒポクラテスたち』しか出ていない、つまり活動期間が1978~1980年に限られている。『青い獣』の受験生はスキゾフレニックでわけわからん感があったが、この作で演じる受験生はまあまともだ。その加納のところに「新しいお母さん」として来た山口は20代半ばで演じていてやたら艶っぽい。 

加納がつけているノートの日記がキモなのだ。これは映画の終盤。

f:id:guangtailang:20190329142333p:plain夫が出勤し、かかってきた電話の応対が妙な感じである。朝一番の厚化粧、今日は何か起こるかな。そう云いながら加納が予備校へ向かう。この後、プラネタリウムや何や出てくるのだが、オリオン座は本編にたいして関わってこない、要するにお義母さんの胸に三ツ星のようなほくろがあるということなのだ。

f:id:guangtailang:20190329142416p:plain権威的な父親戸浦六宏は後妻の足を枕に眠ろうとするが、山口は醒め切っている。なぜなら彼女には外に恋人がおり、密会を繰り返しているのだ。そしてそのことは加納にバレている。

f:id:guangtailang:20190329142449p:plainストリップを見に行った加納はそこでエキセントリックな少女亜湖と出会う。彼女がボログルマの運転に苦労しているのをみて助けてやると、無免許運転で彼女の家まで行くことになる。

f:id:guangtailang:20190329142518p:plain山口とベッドで抱き合い、風呂で洗いっこし、どんどん親密になっていく。ようにみえて実は加納には魂胆があった。しかし、若く艶っぽいお義母さんに加納は実際ビンビンである。

f:id:guangtailang:20190329142640p:plainこの黄昏のタイヤ公園のシーンは別に要らないようなものなのだが、こういうのが却って印象に残るということがある。加納が凝っている工作ヒコーキの先輩の家のそば。

f:id:guangtailang:20190329142710p:plain加納の部屋を俯瞰で。

f:id:guangtailang:20190329142754p:plain露骨にネタバレすれば、山口も加納もそれぞれに戸浦を殺す計画を練っていた。山口には外に恋人がいて一緒になりたい。加納は実の母が戸浦と別れて以来、戸浦への敵愾心を募らせている。そこでさっきの日記だが、これに自分の心情や計画を吐露しているようにみせかけ山口に盗み読みさせる。山口は加納を利用して戸浦を恋人に殺させ、加納に罪を着せようとするが、そのことを加納は織り込み済みだった。

f:id:guangtailang:20190329142834p:plain亜湖はアフリカのタンザニアに行くなどと云うが、その話は結局なくなる。戸浦はマンション屋上のゴルフ練習場でコンクリートの塊を頭に落とされたのち、地上へ墜落させられる。

f:id:guangtailang:20190329142855p:plain亜湖の運河沿いのアパート。酒を呷る加納とアフリカの楽器をポロロンと指で弾く亜湖。倦怠感が漂う。この後ふたりは以前彼女が付き合っていたアメリカ人を真似てアブノーマルに交接するだろう。

f:id:guangtailang:20190329142926p:plain刑事に恋人が自白したことを知らされた山口は加納の部屋を訪れノートを手に取る。そのノートを持っていっても法律的に僕は何の罪にも問えませんよと加納が云う。彼の罠に嵌っていたことを知り、お見事! 私の負けねと観念する山口。

f:id:guangtailang:20190329143006p:plain亜湖のアパート脇の運河が映り、終。

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