夜。なんとなく風祭ゆきさんがみたくなって日活ロマンポルノ 、『恥辱の部屋』(1982・監督 武田一成)をFANZA動画で。タイトルから想像するほどハードな内容じゃなく、わりとほのぼのしてコメディタッチである。終盤、風祭さんがいつまで狐と狸の化かし合いをつづけるのという言葉を吐くが、そんな内容だ。そして、頓馬な男4人よりも風祭さんの方が化かす力量において一枚も二枚も上手だった。
タクシーレストランとは昨今聞かないが、深夜営業という意味か。1982年の段階でもファミレスはあったろうが、今ほど一般的じゃなかったのかも知れない。
そこに集うタクシー運転手4人(厳密には1人は離職している)。猥談に花を咲かせている。向かって左奥・北見敏之、左手前・金田明夫、右奥・信実一徳、右手前・鶴田忍。鶴田が風祭の年齢の離れた夫で、性的不能者である。鶴田は自らの昂奮を蘇らせようと3人を自宅に招き、妻の恥態を撮影したビデオをみせる。ビデオデッキやテープが時代を感じさせる。翌日、北見は風祭を襲うだろう。
カセットコンロもないからして、鍋をやる時はガス管が繋がっている。妻が正座しているのも隔世の感あり。
そもそも鶴田がなぜ風祭と結婚できたか謎だが、結婚とはそうゆうものであるとも云える。つまり、する時にはお互い謎のような飛躍でする。若い妻に群がる同僚ども。彼の比喩で云えば、動物園の猿を観察しているわけだ。鶴田は狸、
風祭は狐。
対北見のあと、今度は金田と関係する。あなたいくつなの? と風祭は2度金田に訊く。22です。子供扱いなのである。フォクシーなのである。
ラブホテルの回転ベッドで金田と風祭が交接しているところに北見があらわれる。風祭はふたりをひらりかわして出て行ってしまうが、頓馬な男たちは殴り合いを始めるだろう。金田の引き締まった躰をみればわかるとおり、金田が勝つ。
妻子持ちの信実は生真面目さゆえに風祭との事のあと駆け落ちしようとするが、当然風祭は駅にあらわれない。信実はチケットを破り捨て我に返ると、公衆電話から家族に連絡し何事もなかったように家庭に戻るだろう。
三上寛登場。鶴田の運転するタクシーの客である。この人は津軽の代々漁師の家系に生まれ、学生時代には寺山修司にその詩作を褒められ、上京後はいろいろあってフォーク歌手や俳優になった。『おんなの細道 濡れた海峡』のとぼけた味わいは忘れ難い。
狐と狸の化かし合いもそろそろ終わりに、動物園の猿の観察もやめにしようと夫婦はあらためて絆を確認し合う。走り去るタクシーを見送りながら風祭は呟く、さようなら動物園のお猿さんたち。鶴田は自分も動物園の猿に含まれていることを知る由もない。
風祭の隣りには三上が座っている。彼女が薬指に嵌めていた指輪をはずし、それを金属の吸い殻入れに捨てて、終。
この他、武田一成のロマンポルノは『青い獣 ひそかな愉しみ』(1978)と『私の中の娼婦』(1984)を観た。それぞれおもしろいし、特に後者の西伊豆雲見温泉のロケーションは特筆に値するが、なにせ画面が暗い。
尚、1978年に社名が日活からにっかつに変更されているが、記述上の煩瑣を避けるため、日活で統一している。