以前、Hさんに旅行の候補地として福島を挙げたところ、フーダオはダメです、と言下に退けられた。彼女が来日して間もなく、「東日本大震災」と現在呼称される地震災害が発生し、地震など無縁に育ってきた彼女にとって揺れもさることながら、首都の混乱や連日のニュース映像がそれはそれは恐ろしかったという。まして原発事故の脅威が大陸でも喧伝され、身内からなぜ帰って来ないんだと詰問されるに及び、彼女の脳裡に福島の二文字は恐怖の類義語のようにこびりついてしまった。だが、抜き差しならない状況で日本に来ていたHさんは結局、留まった。
というわけで、Hさんに予定が入っている今日、僕いちにんでいわき回廊美術館に向かうことにした。この一風変わった美術館の成り立ちについてはWikipediaか何か各自みてもらうとして、11月17日の僕の行動を書きます。常磐道、中郷サービスエリア。自宅からおよそ150km、北茨城市に位置する。高萩とか北茨城まで来ると、茨城といってもはるばる来たなという感じがする。小用を足し、また走り出す。いわき中央インターチェンジで下り、街道と田園地帯を走ること30分ほどで到着。途中越えた踏切は常磐線だったのか。案内板に従って農家の脇の道を奥に進むと、4台ほどの駐車スペースがある。そこから斜面を上っていくと吊り橋に至り、向こうの丘に何やら建造物がある。季節柄、人気も無く寒々しい風景だが、実際は少しも寒くない。いわき市は東北地方としては異例に温暖で、雪も降らないというが。この吊り橋は大人ににんの重量が限界らしく、僕いちにんでもかなり揺れた。斜面途中からの風景。スネーク・ミュージアム・オブ・コンテンポラリーアート(Snake Museum of Contemporary Art)」通称スモカ(SMoCA)と呼ばれるらしいメインの回廊はこの道を進む。これより先、駐車場はありませんという案内板。私有地の中に美術館があり、このツリーハウスもそこにある。実は駐車場もあるが、当然敷地の所有者が使うもので、どうしても駐めたければ2,000円という貼紙。半分ジョークだろう。回廊入口。入場無料だが、無人の箱に多く1,000円が投入されていたので、僕も同額を入れる。牧歌的な里山風景。その中に全長99mの蛇=回廊が横たわっている。【この作品は、世界的な芸術家の蔡國強氏といわき市民ボランティアが小名浜の神白海岸から堀りあげ、1994年にいわき市立美術館で開催された「蔡國強展」で主力作品として展示された「廻光一龍骨」です。】(現地案内板より)ツリーブランコ。当然横に伸びた幹にロープがくくりつけられているわけだが、僕が乗っても揺らしてもびくともしなかった。蔡国强(蔡國強 ツァイ・グオチャン)は福建省泉州市(常住人口865万)出身、1988〜1995のあいだ、いわき市で芸術活動を行っていたという。帰り道、那珂湊おさかな市場で遅い昼飯。海鮮膳2,700円。都道府県魅力度ランキング2018年版で茨城県がまたも最下位になったと聞いたが、ここの賑わいは凄い。というか、そもそもこんなランキングは毛ほども信頼していない。僕はただ、茨城県と実地に出会うだけです。