川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

鳴子峡へ行きたしと思へども

f:id:guangtailang:20181011135057j:imagef:id:guangtailang:20181011135102j:image萩原朔太郎の随筆をKindleで読む。99円。

昨年の秋だったか、おととしの秋だったか記憶が定かじゃないが、友人のSが仕事がらみとはいえタイミングばっちりの時期に鳴子峡の紅葉を訪れ、写真をツイッターにあげているのをみて、錦繡の断崖に目を奪われた。また別の時、それは今年の話だが、事務所のカレンダーを捲り、9・10月の頁があらわれると、それが晴れた日の紅葉する鳴子峡で、圧倒的な色づきにしばし見惚れることになった。例の鉄橋の架かる構図である。行きたい、と思った。しかしその後いろいろの事情を勘案するうち、今年は無理であるという結論に至った。

f:id:guangtailang:20181011160316j:imageカレンダーだから多少は色の調整を施しているとして、他の写真をみてもやはり鳴子峡の紅葉は同じように素晴らしいのだ。鳴子峡に行けないのならば、都会の雑沓を漫歩することでその代替となるかといえば、どうもやはりそれは違う、鳴子峡と同じように空気の冷涼で、傲慢とさえ思えるほどに自然が人を圧倒するような場所でないと、気分の上で代替とはならないのだ。ちなみに私は荷造りや旅費の計算を面倒がらないし、宿屋に泊まるのは好きである。さて、どこへ行こう。

f:id:guangtailang:20181012112354j:imagef:id:guangtailang:20181012112407j:imagef:id:guangtailang:20181012112416j:image2015年10月12日、晴天。横浜市中区本牧埠頭D突堤シンボルタワー。アクセスが良くないので、横浜の穴場と言われている。婚姻以前のHさんと行ったのだが、彼女に電話がかかってきて、それが相手との長い口論に発展するようなものだった。そのあいだ私は恐竜骨格のような白亜の鉄骨回廊で、海を眺めて時間を潰した。電話が終わり、無論Hさんの機嫌は悪い。タワーをあとにし、並んで歩きながら、「ここはどうだい?」と訊くと、「海はあるけど、空気があまり良くない」と言った。まあ、都会の港だからね。せっかく横浜まで来たので中華街にも行ったが、Hさんはほとんど興味を示さず、あまつさえここで中華料理を食べることはないと言い出した。1時間ほど市街を漫歩した末、混雑した電車で立って帰ってきた。だから、晩飯は東京で食べた。今でもHさんは、横浜であろうと神戸であろうと中華街には関心がない。私は人並み以上にある。

f:id:guangtailang:20181012174820j:image事務所での空き時間に、藤岡拓太郎さんの漫画をちょこちょこ読む。f:id:guangtailang:20181012233159j:image夜。いきつけのコインランドリー。歴然と色褪せており、一歩足を踏み入れると、昭和の時空に放り込まれる。奥の引き戸がここの住人の出入り口だ。