川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

情緒

早起きしたHさんがスマホで中国のポップスを流しながら家事などしていて、僕はとろんとしつつ寝床でそれを聴きながら、いいなと思うことがある。こういうのが中華系の「情緒」なんだよなあ、と。ジャ・ジャンク―の映画なんかでも台湾や香港のポップスが巧みに使われており、歌詞の内容までわからなくても、時にほろっとさせられる。中華系ポップスは日本の歌謡曲に影響を受けているのだろうが、やはり言語的なこととか、歌声のこととか、歌唱の仕方とか、つまりは「情緒的」に独特の趣きがあり、起き抜けの頭では、日本の下町の部屋の寝床を、台湾の盛り場のホテルのベッドの上と勘違いするほどなのである。

で、琴音氏なのだが、これはやはり典型的に日本の「情緒」なんじゃないかと思うのだ。僕は単純に彼女のハスキーな歌声が好きだが、今回のMVを見て、正しく日本のポップスだよなあと感じる。映像にしてみても、海との境があいまいな曇り空のブルーグレーの画面、アカペラのところで波の音が聞こえてくるのもそうだし、昭和の病院のような階段、真鍮の把手も、色の少ない簡潔さが、日本的ポップスのムードをいや増している。ともあれ、長岡という、日本的「情緒」を代表するような豪雪地帯からあらわれた16歳のシンガーソングライターミューズを、26歳差の僕は密やかに応援していきます(これはもう親子の年齢差やな)。

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