川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

『ミッドナイト・バス』

先日長岡に行った時、喫茶シャルランの階段を下って表に出ると、並びの商店のガラス戸に貼ってあった映画『ミッドナイト・バス』のポスター。後日気になって調べてみると、ちょうどあの日(20日)から新潟で先行ロードショーが始まっていたんだな。

私は昨夕、全国ロードショーの初日に有楽町スバル座で観てきた。普段ほとんど来ない街で、上映の1時間以上前に着いてしまった。ビル風が強くて冷たいので、巨大ビルの地下街に降りてホットコーヒーでも飲もうと思ったが、チェーン店はすべての席が埋まっていた。向かいの巨大ビルの地下街に移動すると同じチェーンの店にかろうじて2席空きを見つけて入った。狭苦しい空間で熱い液体を啜りながら、都会の犇めくモグラたち、という言葉が思い浮かんだ。

f:id:guangtailang:20180128192849j:image地上に出てみると、そのビルからスバル座まで目と鼻の先だった。

f:id:guangtailang:20180128192901j:imagef:id:guangtailang:20180128192911j:image昭和レトロ映画館、有楽町スバル座。ちょうど前の回が終わったところみたいでロビーが賑わっていたが、『ミッドナイト・バス』を観に来た客の年齢層は高めだ。椅子に掛けた二人組の老紳士が、「原田泰造はなかなか自然な演技をしていたねえ」「うん、良かったね」と泰然と会話していた。館の方も自若としたもので、30分も前から席に座れて、予告上映前の中年女性のアナウンスは「どうぞ、ごゆるりとお楽しみ下さいませ」と言うのだ。

f:id:guangtailang:20180128192948j:imagef:id:guangtailang:20180128192957j:image個人的な意見として、原田泰造大泉洋は二枚目俳優的な顔と身体を持っていると思うのだが、この映画のなかで原田(役名・高宮利一)は山本未來(加賀美雪)と小西真奈美(古井志穂)に惚れられている役で、相当にモテる。利一の言動が優柔不断だと見る向きも多いが、なんだかんだ言って、原田が演じることで色男的な要素に説得力が出ている。役のために大型バスの免許を取ったという原田の真夜中の関越トンネルを疾駆するシーンはなかなか見せる。

157分は長いと感じなくもない。ただ、地味でも丁寧に情緒の描写を積み重ねていく、こういう邦画らしい邦画を愛する感性はいつまでも持ち続けていたい。