川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

天秤棒担ぎと若い女

f:id:guangtailang:20170806221406j:image『ルアンの歌』(1998)。原題は《扁担・姑娘》で、天秤棒担ぎと若い女ということになる。はじまってしばらく、場末感の漂う川沿いのバラック小屋でふたりの男が生活しているさまが映されるが、これが高平(ガオピン)と东子(ドンズ)という同郷の出稼ぎ労働者である。ドンズは武漢の街で天秤棒担ぎをやって日銭を稼いでいる。兄貴分のガオピンはなにか危ない橋を渡っている感じだ。ドンズにも手伝わせてキャバレーの歌うたいの女を尾行したりする。この若い女が阮红(ルアンホン)である。

物語はこの3人の関係を追って進んでいく。ガオピンは途中で死ぬ。ルアンホンも警察にしょっ引かれて感化院に入れられたりする。

フィルムノワールと呼ぶには貧乏ったらし過ぎるのだが、逆にそこが魅力ともなっており、雰囲気のある映画で私は好きである。雨の夜、びしょ濡れのルアンホンがドンズの小屋を訪ねてきて、一夜を過ごすシークエンスは静けさのなかに深海の底のような隔絶感の凄みがある。そして、ラスト。これは名シーンだ。ドンズの想いを込めた小道具と、ルアンホンの笑顔。