川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

アカチャンホンポにて

午前中大雨だったが昼過ぎには止み、錦糸町に繰り出す。Hさんの息子の嫁シャオレイが9月に出産予定なのだが、その胎児(男)の入り用な品を買いにアカチャンホンポへ。やはり日本製がいいということか。

先に昼飯を食おうと、わたしがあらかじめ調べていた羊肉串の食える店へ彼女を誘導するが、地下へ降りていくと一瞬立ち止まってHさんの様子がおかしい。服務員が来たので彼女の背後から「ふたり」と言う。左側に目をやるとガラス張りになっており、羊肉串を烤いているのが見えた。

席についてからもHさんは気乗りしない様子で、マスクもはずさずスマホをいじくっている。メニューに触れもしない。注文する気がないのだ。こうゆう情景は何度かみたことがある。わたしが羊肉串をかじりたいばかりに連れてきてしまったが、さては失敗だったか。と思いつつも、彼女の態度に立腹した。仕方がないので、わたしが羊肉串8本、羊雑湯等をたのむ。しばらくして出てきた料理を眺めると実に貧弱で、池袋の蘭州拉麺店、西川口の新疆料理店、上野の元祖羊肉串店との差にわたしも呆れる。彼女に目をやるとマスク越しにもわかる憮然とした表情。味道もふつうか、あるいはそれ以下だった。何度も書いているが、Hさんは浙江人で、大陸の北や西の食べ物である羊肉をそもそも好んではいないのだが、この店のレベルでは歯牙にも掛けないというわけだった。

地上に出ると彼女がまくしたてる。入店する時に羊肉を冷蔵庫から出しているのが見え、新鮮じゃないのが一目でわかった。さらに案内される時に他の客の食べている料理を見たが、自分好みの傾向のものじゃなかった。それであなたに任せたが、案の定羊肉には変な臭みがあるし、スープも香辛料がキツ過ぎた。おいしいものがまるで無かった。あなたも初めてだったとのことで大目に見るが、次はないでしょう。「ブーハオイース」と前方を見たままわたしは呟いた。

f:id:guangtailang:20200718172422j:imageHさんの実家から送ってきた荔枝干(干しライチ)。濃い緑茶を飲みながらついぱくぱく食べてしまう。茶も諸曁産だ。

f:id:guangtailang:20200718172436j:image今、サマセット・モームの『人間の絆』(新潮文庫)を読んでいて、最初の方はかなり低調というか退屈で読むのをやめたくなるほどなのだが、主人公に惚れる女がふたり出てきたあとにミルドレッドがあらわれてから俄然おもしろくなる。ただ、中野好夫の訳がさすがに古めかしいというかヘンテコなところが目につき、原文を読めるわけでもないがミルドレッドの台詞がいまいちだと感じ、他の訳(岩波文庫の行方昭夫)を探したが、錦糸町の大型書店に無かった。こうしてリアル書店でなくネットで買うようになるのだった。 

f:id:guangtailang:20200718172444j:imageちょうどアカチャンホンポにいる時に俳優の三浦春馬死亡のニュースが飛び込んできた。まさかと驚き、立ち止まって画面の文字を凝視した。