川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

梢というサディスティック

13日の金曜日。夜。昨日観た『団地妻 ニュータウン暴行魔』(磯村一路・1987)は酷かった。あの手の主題であれば、アダルトビデオにもっとすぐれたものがたくさんある。なにせ主演の女優に魅力がない、演技ができない、喘息のストーカーに魅力がない、羞恥プレイに迫力がない、画に工夫がない、話に意表がない。ニュータウンも部屋もまるで趣きがない。とにかく、瞠目する画面が一個もなかった。廃工場で白い煙を噴出させているだけじゃおもしろくもならない。この監督の撮った『がんばっていきまっしょい』(1998)には感心した覚えがあるのだが。

『新・団地妻 けものの昼下り』(加藤彰・1974)をFANZA動画で。これはおもしろかった。【以下、ネタバレあり。役名では呼ばず、俳優の名で呼んでいます】

f:id:guangtailang:20200313222030p:plain平穏な団地の生活を映しながら、ジャズのサクソフォーンが鳴り渡る。

ところ変わって、四畳半の下宿部屋に入り込む樹木の梢。序盤、こんな新緑の爽やかなショットもあるのだが、ラストはどんな画で終わるのでしょう。

f:id:guangtailang:20200313222111p:plain緑のカーテンを背に、梢ひとみが眠っている志賀圭三郎をみつめる。この顔だけでもう何か不穏なのだが、案の定、剃刀を手にしている。

f:id:guangtailang:20200313222203p:plain宮下順子貞淑な妻を任じているが、最近、ゴルフだけが生きがいという夫の行動に不審を感じ始め、密かに興信所を雇い、素行調査をしてもらっている。

f:id:guangtailang:20200313222323p:plain案の定、夫はバーのマダムと浮気をしていた。ある日、興信所の男にそのバーに連れていかれ、バーテンに促されるまま覗き穴から目を凝らしてみると、そこにはバーのマダムの足を舐めまわす夫の姿が。この後、バーテンに脅され、犯される宮下。ことが終わったところにマダムが階段を下りてくる。裸の宮下を不敵に見下ろすマダム。この映画は説明過剰でないのが好ましい。

f:id:guangtailang:20200313222403p:plainそれからというもの、グルになった興信所の男とバーテンに犯されるようになり、徐々にマゾヒズムの快楽に目覚める宮下。ある日、ふたりに連れられ、白黒ショーの会場のような部屋に入る。そこでは蛇遣いのショーが繰り広げられていた。横たわる女の乳首や陰部を蛇に嚙ませたり、男が蛇の頭を喰いちぎったり(これはほんとうに食いちぎっている)、なかなかグロテスクである。幼少の頃、両親に連れられ、浅草の見世物小屋でこうゆうショーを見た記憶がおぼろげにあるのだが、あるいは捏造された記憶かも知れない。

f:id:guangtailang:20200313222436p:plain興信所の男とバーテンにまとまった金を与え、操縦していたのは梢であった。裸の宮下の前に鞭を持ってあらわれる梢。梢は一言も言葉を発せず、そのことによってミステリアスな雰囲気を醸している。サディスティックな表情が素晴らしい。

f:id:guangtailang:20200313222649p:plainf:id:guangtailang:20200313223132p:plain宮下の昔の男=志賀をめぐる梢の復讐劇の末、梢は吊るされた宮下に抱きつき、またも剃刀を手にする。宮下の焦点の定まらない瞳が虚空をみつめ、終。

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