川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

たそがれどきはけうとやな

f:id:guangtailang:20200117111549j:imagef:id:guangtailang:20200117111600j:imagef:id:guangtailang:20200117132951j:image15日夕。ころ柿をスーツのポケットに忍ばせて業界の新年会に赴く。無論、裸ではなくラップにくるんである。

不忍池の弁天橋をとぼとぼ歩いていると、薄闇の向こうから若い男の甘ったれた中国語が聞えてくる。多少の興味ですれ違いざまに見やれば、同年代の女に後ろからしなだれかかっているようだ。女は相手にせず、前を向いたまま「烦死了」と呟く。かといって振りほどくでもない。私は水面の照り映えに寄っていく。男の声がだんだん遠ざかる。たそがれどきはけうとやな。

f:id:guangtailang:20200117115952j:image17日朝、曇天。Hさんの「在留期間更新許可申請」の件で、品川の入管に赴く。平日の日中しか開いていないので、ムリに時間を割いて来た。駅前からバスに乗り、運河を渡る。ゴミ清掃車やミキサー車、大型トレーラーとともに走る。品川駅の巨大なコンコース。あそこをサラリーマンやオフィスレイディがぞろぞろ歩いている光景は相変わらず気色悪いななどとぼんやり考えながら。

業界組織のあれやこれやで考えること、やるべきことが多いさなか、例によって唐突に切り出されたので彼女と諍いになったが、考えてみれば一緒に来るのは当然のことで、業界なぞ彼女には何の関係もないことだった。 

f:id:guangtailang:20200117120004j:image局内は人人人で溢れ返っているが、われわれの相談窓口は思いの外空いており、30分もかからず番が廻ってきて、前向きな回答が得られた。腕時計を見やると午前10時40分。中央アジア系の人が目につくような気がする。建物の外に出るなり私は、「新橋の沸騰…なんだっけ、しばらく行ってないから忘れた。あそこの水煮魚が食いたい」と言った。今日はつき合わせてしまったので、昼飯をおごるというHさんの言葉を受けてのものだ。「好滴」。

f:id:guangtailang:20200117120015j:imagef:id:guangtailang:20200117120026j:imagef:id:guangtailang:20200117120036j:imagef:id:guangtailang:20200117120051j:imageサイゼリヤを目の敵にするつもりはないが、新橋でも羊肉の串はたやすく食べられる。顔なじみの老板がいないか、マダム風を吹かせながらHさんが若い服務員に訊ねるも、時間が早過ぎてまだ来ていないようだ。ムリに時間を割いたなどと言うわりには、沸騰漁府で泰然と箸を動かす壮年なのだった。