川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

醉蟹

f:id:guangtailang:20191104235742j:image4日、小春日和。最近、Hさんが気に入ってよく行っている巣鴨上海料理の店。ぼくは初めてなのですが、蟹好きの彼女が醉蟹(ズイシエ・酔っぱらい蟹)を食べさせたいというのでひょいひょいついていきました。T恤いちまいでよいくらいの陽気で、街路を歩いていると額に汗がにじんできます。

f:id:guangtailang:20191104235813j:imageぼくは巣鴨で下車することがほとんどなく右も左もわかりませんが、彼女は勝手知ったる様子で並木道をすたすた歩いていきます。後ろからついていきながら、店舗の陳列窓に映る己の姿、とみに頭髪が薄くなっている現実を陽光の下に受け止めます。

f:id:guangtailang:20191104235826j:imageよだれ鶏。これはぼくの好物ですが、Hさんは鶏肉が好きではないので一切れつまむ程度。彼女と焼き鳥屋に行ったことは一度もありません。好きでない理由はなんだか曖昧なままですが、とりあえずぼくのために点菜したようなものです。なにやら上海語でHさんと老板娘(ラオバンニャン)が会話したあと、あなた、日本人? 中国語わかる? うん、普通話(プートンフア)でしょ。だから奥さん、日本語下手ね。 飲みもの、昼だからアルコールじゃない、王老吉(ワンラオジー)あるよ。と矢継ぎ早に言われます。

f:id:guangtailang:20191104235834j:imageメインの醉蟹。殻に独特の滑らかな光沢があります。珍味といった感じで、食べる価値はあると思いましたが、気になったのが生の上海蟹を老酒に漬けたものなので、寄生虫などがしぶとく生き残っていたら、ということでした。と言いつつ、そんなことを考え出したら生モノ全般心配しなきゃならなくなるので、さほど深刻になったわけでもないです。これはHさんが3分の2くらい食べました。中央の茶黒いのは話梅(フアメイ・干し梅)。

f:id:guangtailang:20191104235841j:image茹でカリフラワー。これは優しい味道。昼時を過ぎているのにもかかわらず客が次々訪れ、たいして広くもない店内が満席になります。

f:id:guangtailang:20191104235847j:image小松菜と木耳の炒め。これなら家でも簡単につくれるとHさん。複数で来店した客は皆中国人、いちにんの客は日本人のようです。日本人は套餐(タオツァン)好きです、とぼく。

f:id:guangtailang:20191104235858j:imageあんこ棒。なのですが、彼女が前回来た時は中身にあんこは入っていなかったと老板娘に文句をつけます。だから、この点心はあんこ棒じゃないのです。じゃあ、何が入っていたのかという話ですが、何も入っていなかったと。飲食店で、おかしいと思ったら率直にそのことを伝えるのが向こうのスタイルのようで、ぼくは何度かそうゆう場面を見たことがあります。また、客同士が服務員に聞こえる声で、味道が変わった、つくるひとが変わったのかしら、などと言い合います。

老板娘が悪いと思ったのか、この後、小さい皿の杏仁豆腐がサービスで出ました。が、杏仁豆腐をまたHさんが好きではないのです。口をつけません。食べなよ、とぼくに向けるのですが、こちらも満腹です。困ったなあ。困ってないなあ。まあでも、残したところで老板娘は少しも気を悪くしないでしょう。