にっかつロマンポルノ、『昼下りの女 挑発‼︎』(1979・監督 斉藤信幸)をDVDで。ここにはロマンもポルノもなく、荒唐無稽なドタバタがあるに過ぎないといえばいえるのだが、極彩のパワーが横溢しているので最後まで観てしまう。いろいろと大らかだった時代に、濡れ場さえ入れればなんでもよいというロマンポルノの枠の中でつくられた映画だ。自分の生まれた70年代後半にこのような日本映画があってよかった。先の展開の読めなさがおもしろい。【以下、ネタバレあり。役名では呼ばず、俳優の名で呼んでいます】
歯科医の妻が夫に嫌気が差し、赤いクルマで旅に出る。夫からみれば「蒸発」したということになる。踏切待ちをしていると後ろから追突され、驚いて振り返るとこのありさまだ。彼らは逃走、軽快な音楽にのせてカーチェイスが始まり、ああ、この映画はこういうトーンで進むわけねと合点する。
カーチェイスの最中に青年をはねてしまい、彼にケガはなかったが、それがきっかけで飯をおごり、静岡までクルマに乗せてやることにする。先に言ってしまうとこの青年、石太郎はホモセクシュアルである(現在ならゲイと呼ぶのだろうが、この時代はこれである)。
だから、八城夏子とラブホテルに泊まり誘惑されても応ずることができない。そしてそのまま目的地の静岡に至る。静岡だから海と蜜柑を出しておけばいいだろうという画づくり。
蜜柑小屋の中で股間に蜜柑汁を垂らしながら交接していたのは石の恋人、鶴岡修と周囲に押し付けられた(という口実の)婚約者、日向明子。
鶴岡と石の接吻。
ホモセクシュアルの石に好意を抱いた自分を羞恥し、最後に飯をおごって別れようと奇妙なドライブインに入る。こんな首吊り人形が揺れていたらすでになんかおかしいのだが、
店内は変哲もないといえばいえる。しかし、眼鏡のマスターとカウンターに座る編み上げブーツの男たちは都会から来た客を快く思っていないようだ。
ここまでで映画の時間として前半30分が過ぎているのだが、ここから後半のドタバタが加速していく。
いつの間にか消えてしまった石を探しに外に出る八城。不安が顔に貼り付いている。後方に駐まっているブルドーザーも不穏な感じだ。
この後、一旦は赤いクルマでこの場を離れるのだが、便所で血のついた警棒を拭っていた男の映像がフラッシュバックし、八城は店に戻ろうとする。そこにブルドーザーが道を塞ぐようにあらわれる。
逃げるように脇道に逸れ、しばらくいくとバイクの若い男女がいて、強引にクルマに乗ってくる。後部座席の様子を窺っているとやはり低能な若者たちのようだ。
若者たちにクルマを奪われるが、女の方が鞄がないことに気づき、八城を追ってくる。ところがクルマは脇に突っ込み、ふたりは気絶する。そこに件のブルドーザーがあらわれる。
車内に八城がいないことに気づく田舎の荒くれ者たち。低能な男女は目を覚ますが、男の方は岩石で頭を割られ絶命する。すがりつく女。
その後、田舎の荒くれ者たちがやりたい放題に動き廻り、ドタバタは絶頂に達する。ドライブインでは高橋が石を締め上げる。貴様らに女房に逃げられた男の気持ちがわかるのか、と。
さらにドタバタがあり、砂浜で石が荒くれ者たちをなぎ倒す。八城と洞窟のようなところを抜けて、
またドライブインで石と高橋が取っ組み合い、拳銃が便所に転がって、それの争奪戦。
石が椅子を何度も振り下ろして高橋を絶命させ、静けさが戻ると、ドライブインの前で石と八城は別れる。その頃、八城の夫は別の女と交接していた。女が裸で冷蔵庫の扉を開け、牛乳を飲むシーン。
八城は家の前から電話をかけ、すぐに戻る、あなたの赤ちゃんを生むことに決めた、と快活に言って玄関に向かっていく。終。