川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

ボミワ

羊肉串5本盛りとクラゲの黒酢和え。

f:id:guangtailang:20190630163350j:image30日、雨。Hさんが雨だからやめましたと本来の予定をキャンセルする。相手方も雨だからやめましょうと言ったらしい。このように雨を理由に予定をキャンセルする行為を仮にボミワと呼んだところで差し支えないだろう。そういうわけで、Hさんの読書用眼鏡と携帯充電器を買いに秋葉原に行く。

眼鏡が仕上がるのを待つあいだ、総武線のホームを真横に眺められる喫茶店でケーキとコーヒーを食らう。おれがブルーベリーの乗ったチーズケーキ、彼女がフランスの田舎風いちごケーキを注文したのだが、二口も食べると交換してくれろと言う。応じると、ぺろりと平らげた。チーズケーキはあまり好まなかったはずだが、7粒をよすがにそれも気にならなかったらしい。

f:id:guangtailang:20190630163304j:image眼鏡を受け取り、携帯充電器を口論しながら買い、まあそれも落着して御徒町に向かってぶらぶら歩いていると、またぞろ降ってきた。おれの背負うバックパックの脇を指して傘を取り出させようとするが、まだ平気と彼女はいう。しかし、雨脚が強くなって結局傘をひろげる。すると以前から気になっていた羊肉の店が目前にあった。「肚子饿了吗?」「不是很饿」などとやりとりしつつ一度は通り過ぎるが、雨宿りを口実に軽く食っていこうと促し、店に戻る。ガラス張りだから外から覗けるが中国色は感じられず、なんだか飾り気のない居酒屋みたいだ。黒板に本日のオススメが列記してある。それらメニューも全部日本語で、中文併記ではない。服務員は中国人だが、完全に日本人客がターゲットのようだ。2階に通されると、右隣りのテーブルに座るおれと同年代のおばさん4人組がすっかり出来上がっているようで、一斉にけたたましく笑った。Hさんが小声でうるさいねと言う。日本人は酔っぱらうとこうなるんだよと応じる。サッポロ黒ラベル中瓶、羊肉団子の土鍋煮やよだれ羊肉もたのむ。後方のテーブルはつなげられて大人数の宴会で、若人の軽快な笑い声が響く。中国人のやっている羊肉の店で中国人客が見当たらないのは初めてのような気がした。

f:id:guangtailang:20190630163401j:imagef:id:guangtailang:20190630163412j:imageHさんは諸曁の新疆人のやっている羊肉串がやっぱり美味しい、さあ、雨も弱まったようだし出ましょうというのだが、おれは5本盛りを再注文して、眉を顰められた。羊肉串をかじるさまを動画撮影して諸曁の息子に送り、どっちが美味しいと思う?などと反語表現で音声を入れている。さてこの店、ボリュームは多くないわりに値段は高めのような気がする。日本人客相手でも、昨今、中国料理事情に精通している人は少なくないから、どうなのだろう。次回は西川口に連れていってあげましょう、などと相手方を誘う大人もあるかもしれない。

せっかくなので母親に連絡を取り、実家に寄る旨伝える。湯島天神泉鏡花筆塚。

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