川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

五シェ

1日、晴れ。今日から日本は令和。Hさんの家族は何の関心もないか、もしくはその事実すら知らない。これも最近整備されたという春风十里小镇なるテーマパークに行く。入場口からゆるやかな斜面を上っていくと茶畑が広がる。遠景には山並みが霞む。動物園のような臭いがすると思ったら、丘陵に羊や仔馬、狗や兔子がいた。Hさんが仔馬の毛並みをみて、这么脏的なんとか(こんなに汚い…)と呟く。風が強いので风筝(凧)を操っている人もいる。規模は大きいが、この手のパークなら日本にもある。

f:id:guangtailang:20190505131858j:image
f:id:guangtailang:20190505131854j:image
f:id:guangtailang:20190505131851j:image園内が広いし勾配があるので脚酸となり、腹も減る。とりわけHさんと妹が繁みにクマイチゴの実が生っているのを見つけ、「阿公公(アゴンゴン)じゃないの」と衣服や靴が汚れるのも気にせず分け入り、あっちこっち探し廻って疲労していた。そのわりに成果は少なかった。

※「阿公公是奉化,诸暨方言叫法(可以代表宁波和绍兴话)」(百度百科より)

去年の夏にも来た諸曁の家庭料理を出す江味馆。ここは何を食べてもうまかった記憶があるが、今回もやはりうまかった。クルマの中で諸曁に日本人はいる? と訊いたら、Hさんがあなたひとりしかいないと冗談で返し、シャオレイが杭州と寧波にはけっこういますよと答えた。ちなみに彼女は杭州市萧山区浦阳の出身だ。江味馆に来たことのある日本人が何人いるか知らないが、この味道なら日本で店を出したら繁盛すると思う。

f:id:guangtailang:20190505131902j:image中国ではよくあることだが、魚の尾ひれがびゃーんと他の料理に乗ってしまう。この豆腐料理がスモークされたような味道でやたらとうまい。男2人女4人で食って、300元ちょっと。

f:id:guangtailang:20190505132055j:imagef:id:guangtailang:20190505132102j:imageディンディンが私に耳打ちし、推拿に行こうと云うので一瞬淫猥なやつかと思ってしまったが、普通の按摩だった。「我们有事情」とHさん他を金山越府で降ろし、シャオレイを連れて彼がオススメの、外観を見る限りそれなりの値段を取りそうな、運河沿いの按摩店の前にクルマを駐めた。階段を上がって2階奥の個室に通されるとちょうど運河に面しており、小鳥の囀りが聞こえてくる。寝台に伏臥し、顔を穴に埋めると按摩師のドアを開ける音が聞こえ、中年男の渋い声でどこが辛いか訊かれたので、「脖子、肩膀」と答える。そのあとは気持ち良さに寝てしまい、穴に涎を垂らしてしまった。不意になんとかと云われ、聞き取れなかった。「侧身(横向きに)」と云われたのだとディンディンに教わる。シャオレイは推拿せず、仰臥してスマホを弄っていた。

Hさんからディンディンに微信で連絡があり、公公の家で松花饼を作っているからこれから行くよ、とのことだった。そういえば初日に松花饼を食べたいというようなことを私が呟いたのだった。中国人はたしかに大雑把なところがあるし、むしろあまり細かいことに拘泥していると小人と思われるが、人がぽろっと呟いたことや、ちょっとした動きをよく観察していて、実に繊細な心配りができるというのもまた真である。北方人と南方人の妻を経験した私からみると、やはり南方人は余計にそうだと思えるが。

f:id:guangtailang:20190505132051j:image
f:id:guangtailang:20190505132059j:image公公の家でシャオレイが明らかに不機嫌で、そのうちふいといなくなってしまったので心配する。どうやらディンディンと外を歩きながら話をしているようだ。あとでクルマの中でディンディンが実は今日が彼女の誕生日なのだと云う。それを彼は忘れていた。Hさんがなんでもっと早く云わないのだと息子を罵る。忘れていたのだから云いようがない。金山越府に戻り、Hさんがゴールドのブレスレットをシャオレイに渡している。用意のない私は、「小蕾,生日快乐!! 你们两个人一起去吃饭吧」と財布にあった大半の100元札を渡そうとするが、「叔叔,不要,我们一起吃吧」と受け取らないので、むりやり彼女の部屋の椅子の上に置いた。

f:id:guangtailang:20190505132244j:image
f:id:guangtailang:20190505132251j:imageカップルは火锅を食べ、电影を観たらしい。午後10時半頃、帰ってきた。 

f:id:guangtailang:20190505132254j:image2日、晴れ。昨日持ち帰った松花饼と咖啡の朝飯を済ませ、五泄へ出発。沉香湖、春风十里と行ったが、やっぱり私は五泄が好きだ。これだけの大自然が金山越府のごく近くにあるのだから、季節も良いし、行かない手はない。

五泄が近づくと渋滞し始めた。杭州とか他所からもけっこう来ているな、とディンディンが呟く。駐車場が満車で、金を払って路肩に駐め、入場口まで歩いていく。途中、ポン菓子みたいなのをHさんが買って、「我们中国人、こうですよ」と歩きながらぱりぱりかじる。

このおじさんがやっています。個人的には中国の味のあるおじさんはどんどん撮っていきたい。

f:id:guangtailang:20190505132247j:image入場口。初夏のような陽気。

f:id:guangtailang:20190505132436j:image
f:id:guangtailang:20190505132439j:image無料の客船か、有料のモーターボートで湖を渡る。乗船中、タバコの吸い殻を湖に捨てている、みるからに田舎臭い顔のあんちゃんがいて、げんなりさせられる。ディンディンやシャオレイは喫煙しないが、ふたりがゴミのポイ捨てをしているところは見ていない。ちなみに五泄にはゴミ箱がいたるところに設置されている。

f:id:guangtailang:20190505132448j:imagef:id:guangtailang:20190505132637j:image
f:id:guangtailang:20190505132624j:image
f:id:guangtailang:20190505132620j:image
f:id:guangtailang:20190505132633j:image
f:id:guangtailang:20190505132627j:imagef:id:guangtailang:20190505132929j:image五泄(五洩)こと五シェはウーシェか。

f:id:guangtailang:20190505132934j:image夜、Hさんの妹の家で晩飯。妹の夫ジェンファが予定を繰り上げて金華から戻る。私はこの人が好きだ。彼の言葉はこの地の方言が強く、普通話もそれに引っ張られてよく聞き取れないのだが、顔とか雰囲気、豪快さ、剽軽さが好きなのだ。円卓で隣りに座り、白酒を私の飯茶碗にどぼどぼ注ぐので、あとでバドミントンをやった時に眩暈がひどかった。それでディンディンとシャオレイがやっているのを座ってみていた。ちなみに方言ではジェンファをジウォと呼んでいるように聞こえる。

f:id:guangtailang:20190505132937j:image