日活（にっかつ）ロマンポルノ、『のぞき』（1983・監督 武田一成）をFANZA動画で。狭山が舞台のへんてこなファミリーピーピングストーリー。【以下、ネタバレあり。役名では呼ばず、俳優の名で呼んでいます】
茶畑の中を走るタクシー。井上麻衣が彼氏を振って一年ぶりに帰郷する途中。この娘はあっけらかんと性に奔放、車内で着替え始め、それをバックミラー越しに窃視していた運転手が危うく事故りそうになる。
昭和58年の狭山市駅舎。
井上は「ポルノ界の百恵ちゃん」といわれたそうで、劇中にもそういう台詞が出てくる。ロマンポルノも80年代に入るとアイドル的な要素が入ってくるな。
実家には父親の鶴田忍と母親の中島葵のふたりがいるだけだったのだが、いろんな人間がどんどん入り込んでくる。ふたりの夫婦関係は冷めきっており、お互い外に若い遊び相手がいる。
茶畑の中をランニングする井上。日傘に和装の中島と出会い、「買い物？」「なんですかその恰好。おっぱいゆらゆらさせて」という会話がなされる。
黄昏時。この作では蜩の鳴き声がよく聞こえる。交接している最中にも聞こえてきて、夏の物寂しさが漂う。
叔父さんの紹介だという北見敏之と泉じゅんのカップルがやってきてそのまんま居座り、鶴田の遊び相手、美野真琴まで入り込んで、なぜだか皆で食卓を囲む。ちなみに口髭を生やした北見が交接する場面、くちゅくちゅと淫猥な音が鳴る。このもっともらしい効果音はいかにして製作されたのだろう。のちに中島の若いつばめ、坂田祥一郎も井上のお見合い相手として入り込んでくる。
画面がぎゅうぎゅうである。皆でそうめんを食べたあと、夫婦ふたりが部屋に残される。中島が手づかみでそうめんを鶴田の皿に入れ、鶴田がそれを戻し、また中島が入れ、とやっているうちに互いにそうめんを鷲づかみし、相手の顔面に投げつけ合う。そして、ふたりは離婚に至る。積年の不満がそうめんをきっかけに爆発したに過ぎない。
妻が去り、娘が去り、遊び相手も変なカップルも去り、最終的に独りとなった鶴田を憐れに感じる（頼りない坂田がいるにはいる）。この男は悪い人間ではない、むしろ娘思いの心根の優しい父親なのだ。他方、娘は上京するや、美野とともに交際クラブに登録する性の奔放ぶりであった。
※中島葵さんは45歳で早逝されている。残念なことだ。
7日。Hさんの研修が鶴見であり、私もつられて午前6時45分に起床。その時にも狭山の茶畑の映像が脳裡に浮かんだので、行ってみることにした。検索すれば、狭山茶の主産地は狭山市（人口15万余）ではなく入間市（人口14万7千余）で、広い面積の茶畑があるのも入間、茶業公園からの眺めが良さそうだった。午前8時前に出発。
公園というより、築山である。入間・狭山は緑茶生産の経済的北限だという。この緑茶というのが、Hさんの故郷浙江省から日本に伝わったのだ。寧波の港を出る船に茶の種子が積まれて。
きれいに刈り込まれた茶畑の中を走るのは爽快。車道のすぐ際まで迫っているのだ。
近所だったので入間市博物館にも寄った。常設展示の中に「茶の世界」というフロアがあり、茶の種類や伝播の仕方は興味深く、わりかし丁寧にみた。根本は雲南に発するらしい。日本には最初、遣唐使によってもたらされた。
狭山PAで茶そばのW盛り、舞茸、茄子の天ぷらを喰らって早々に帰宅。
