川の照り

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

コケティッシュ

f:id:guangtailang:20190405084309p:plain日活ロマンポルノ、『欲情の季節 蜜をぬる18才』(1973・監督 武田一成)をFANZA動画で。昨晩、自室を暗くしてこれを観ていると不意に気配を感じ、振り返るとHさんがいてにやにやしている。普段、彼女はスリッパを履いているので、ぺたぺたという音で居場所を感知できるのだが、足元をみると素足だった。いたずら心を発し忍び足できたのか。しばらく一緒に観る。主演の女優が漂亮で时尚だと云い、それから彼女は「これ三级片ですね。一半黄色的」と付け加えた。いい勘してるよ。それにしても、この晩観ていたのが『欲情の季節 蜜をぬる18才』で良かった。

※漂亮(きれい)、时尚(スタイリッシュ)、三级片(エロ、ヴァイオレンスなどをはじめ、多く荒唐無稽な映画作品)、一半黄色的(半分、ポルノ)。

f:id:guangtailang:20190405084335p:plain一見して藤田敏八の映画のようだと思った。武田一成もこの時期、こういうものを撮っていたんだな。無為で無目的な若者の青春を洗練されたタッチで。黒い鍔広帽をくるっと画面に向けると、そこにスタッフの名が重なる。おしゃれだ。【以下、ネタバレあり。役目では呼ばず、俳優の名で呼んでいます】

f:id:guangtailang:20190405084402p:plainたしかに主演の梢ひとみがチャーミングでスタイリッシュ。小悪魔ともコケティッシュとも呼べるだろう。昭和48年の彼女だが、このままの恰好で令和元年の雑踏を歩いても違和感はないだろう。

f:id:guangtailang:20190405084427p:plain家の中もレトロモダンで、立地が長い石段を上った高台の、寺社の境内の脇にある設定。境内からはビル群が眺められる。ちなみに梢の着る黒いシャツはシースルーだ。

f:id:guangtailang:20190405084455p:plain男友達、五條博の部屋。2本の糸を操って人形が上り下りする玩具で無聊を慰める。

f:id:guangtailang:20190405084518p:plain梢は鍔広帽が実によく似合う。冒頭、彼女がクルマの中で心中未遂している男女を発見するのだが、その男女が梢が中絶のために入院した同じ病院にいた。彼女は男の方に興味を抱く。男が退院すると尾行して、彼を連れて五條の部屋に転がり込む。男、志賀圭二郎は心中の後遺症でインポテンツになっていた。けれども五條はふたりに嫉妬心を募らせ、些細なきっかけでそれが爆発し、志賀をボコボコにする。梢は志賀を連れ、産婦人科医の持つ海辺の別荘へ行く。そこの浴室で産婦人科医、坂本長利の躰を洗う梢。坂本もまた不能であったのだが、梢を抱くことで機能を恢復させる。

f:id:guangtailang:20190405084545p:plain不毛で空騒ぎじみた舞踏会。志賀は少しも言葉を発さず、終始脱力している。

f:id:guangtailang:20190405084615p:plain断崖絶壁の連なる浜辺ではしゃぐ梢。これは御宿の海岸らしい。

f:id:guangtailang:20190405084641p:plain溺れた梢を助け、水際で抱き合うふたり。

f:id:guangtailang:20190405084710p:plain若い志賀圭二郎はなかなかのイケメンである。

f:id:guangtailang:20190405084737p:plain外房の雄大な景色。

f:id:guangtailang:20190405084801p:plainバスの方向幕に「御宿土地」とあるのだが、これはいすみ市の不動産会社で1970(昭和45)年からあるらしい。

f:id:guangtailang:20190405084823p:plain喉が乾いちゃったとクルマを降り、売店で買うふりをしてちょうど来たバスに乗って志賀を置き去りにする梢。後部座席から手を振り、トンネルを抜けると向き直って「さようなら、死にぞこないさん」と一言。興味を持っただけで、恋心や愛情などなかったのだ。

梢ひとみは現在の岩手県北上市出身。

f:id:guangtailang:20190405084854p:plain