川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

灰青色の街

日照重慶(2010・邦題 重慶ブルース・監督 王小帥)を日本版がなかったので大陸版DVDで。日照というのは日が差すとか、太陽に関係することかと最初思ったのだ。重慶などの内陸地域は日照時間が少ないと聞いたことがあって、それで余計にそういう連想になった。ほれ、このタイトルバックも曇天にけぶっている。しかし、調べてみると日照という港湾都市山東省にあるらしい。だからこの題名は都市の名前をふたつ、ごろりと並べたものなのだ。【以下、ネタバレあり 役名では呼ばす、俳優の名前で呼んでいます】

主演の王学圻は船乗りで現在日照に生活の拠点があるのだが、14年前に捨てた重慶に戻ってくる。当時婚姻していた妻とのあいだにできた息子が人質をとってスーパーに立てこもり、警官に射殺されたという報を受けたからだ。彼は長年会っていない息子がなぜそのような行動に走り、どうして死ななければならなかったのか、真相を究明しようと関係者のあいだを渡り歩く。

f:id:guangtailang:20190305205238p:plainメガシティ、重慶。驚異の3,000万都市。坂が多く、ロープウェイやモノレールが非常にフォトジェニックな街でもある。いつか行ってみたい。

f:id:guangtailang:20190305205337p:plain朋友と久闊を叙する。向かって右が王学圻。左が王奎荣。他の人間が何を今さらのこのこ帰ってきてと王学圻につらく当たる中で、王奎荣とその妻は以前と変わらぬ態度で迎えてくれる。

f:id:guangtailang:20190305205412p:plain美麗警官。王学圻が事件の経緯を訊こうと新聞の記事を示し、一応は手に取るがすでに処理されていますとすげない対応。

f:id:guangtailang:20190305205445p:plain美麗警官。こんな警官いるのかよと思ってしまうのだが、実際いるんです。私も大連やハルピンでみた憶えがあります。モデルの制服コスプレかと見紛うのですが、170オーヴァーの身長で凛と立っていました。

f:id:guangtailang:20190305205531p:plain武骨な王学圻。この映画の中では一度も笑わない。モノレールに乗っている。窓の外に大河。

f:id:guangtailang:20190305205602p:plain美麗警官。ほとんどアリーナ・ザギトワのレヴェル。再度訪ねてきて懇願する王学圻に折れる。

f:id:guangtailang:20190305230925p:plain真ん中の低くなっている層のビルに王奎荣夫妻が住んでいる。階下のヴェランダにはビリヤード台があり、若者がたむろしている。

f:id:guangtailang:20190305205646p:plain亡き息子の足跡を辿って、いきおい夜の若人の生態にも踏み込む。

f:id:guangtailang:20190305205712p:plain雨の広場をとぼとぼ歩き、宿に向かう。

f:id:guangtailang:20190305205741p:plainかつて婚姻していた妻は王学圻にもっともつらく当たる人物だが、彼女にはすでに現在の生活があり、夫や娘がいる。家族の団欒を陰からみつめる王学圻。とはいえ、彼にも日照に現在の家族がいるのだ。重慶の街は今や彼にとって悔恨の同義語となりつつあった。

f:id:guangtailang:20190305205813p:plain映画の後半にあらわれて、重要になってくる息子の元恋人李菲儿と、王奎荣の息子秦昊。

f:id:guangtailang:20190305205845p:plain美貌の李菲儿(遼寧省出身)。映画は二組の父と子を描いており、そこが見どころなのは私もわかっているが、正直灰青色にけぶる街並みと美麗な女性にばかり目がいってしまった事実を否定できない。