川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

摇啊摇, 摇到外婆桥

f:id:guangtailang:20190207003331j:image『上海ルージュ』(1995 原題『摇啊摇, 摇到外婆桥』)をDVDで。上海ルージュって、この映画観終わってもわかったようなわからないような邦題だな。鞏俐が真っ赤な口紅を引くからか。原題は、揺られ揺られて、おばあちゃんの橋まで、というわらべ歌から取られている。上海の黒社会の映画なんだろうと観始めるが、意外や派手なドンパチはほとんどない。むしろ、不穏さを孕んだ静謐な膜が全体を覆っている。その内側で紅(あか)や藍(あお)の色彩が目眩く。唐旦那の屋敷の壮麗さ重厚さに瞠目し、鞏俐の妖艶さ高慢さに魅了され、個人的には叱られながら導かれたいと思ってしまう。30くらいで演じているんだな。主役の少年水生は目がきれいだが、覗き見ばかりしている。わずか7日間を描いた物語で、4日目に上海の街を離れ、少年はじめ主要人物が小島に渡ってしまう。そこは長閑な場所で、上海ルージュという都会的な題名からは程遠い。ただ、金宝(鞏俐)のような派手な女が淋しい島で無聊を託つ様子は艶めかしいし、島の少女がえらく可愛い。そして7日目、事態は風雲急を告げる。これ以上書くと、クライマックスのネタバレになってしまうので控えるが、それまでやや迫力不足にみえていた唐旦那が、さすがは上海の裏の顔役というのがわかる。ただ、冷酷な出来事が起こっていても、その現場は描かれず、映画としての様式美が優先される。ラストは奇妙な画面で、えっと思わせられる。張芸謀はこの作品を気に入っていないそうだが、逸品に数えられてもおかしくない映画だ。

f:id:guangtailang:20190207003338j:image媛小春 剝いて差し出す 指と爪 数奇なサラリーマン川柳