川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

何者

f:id:guangtailang:20190111120354j:imagef:id:guangtailang:20190111120401j:image松浦寿輝『秘苑にて』(書肆山田)より

f:id:guangtailang:20190113004757j:image川勝徳重『電話・睡眠・音楽』(リイド社)。この表紙は表題作に関わるものだが、他にも13の短篇が収められており、それぞれに表題作とはかなり毛色の違う劇画だ。私にはむしろそちらの方がおもしろかった。いちばん好きなのは、梅崎春生原作の「輪唱」(3篇に亙る連作)。猫のみ劇画タッチでなく極端にディフォルメされているのは、ああゆう展開だからか。赤塚不二夫(藤雄)の満洲からの引き揚げを題材に取った「絵物語」も良かった。

平成生まれの描く劇画に初めて接したが、初っ端から「コキュ」のような表現が出てきて、作者のプロフィールをみなければ、もっと年配の人間が描いていると多くの人が錯覚すると思う(名前も昭和生まれっぽいし)。作者による「解題」を読めば、漫画(劇画)の歴史や技術にも精通しており、非常に批評的自覚のある人で、文章も読ませる。梅崎春生全集を家蔵するという、作者は一体何者だろう。