アン・ホイ(許鞍華)監督の『傾城之戀』(1984/98分)は、原作にかなり忠実につくられている。グラスの底に密林がみえる。レパルスベイ(浅水湾)ホテルの朝食。この後、流蘇が上海に戻ると言い出す。雨のレパルスベイ・ホテル。漂うふたり。香港に戻ってくる流蘇を埠頭で待つ范柳原。緑のガラスの瓶のようなレインコート。日本軍によって爆撃、その後占領されたレパルスベイ・ホテルの夜。映画の出来としてどうかと言われれば、まあそこまでのものではないが、雰囲気は出ているので、みるべきところはある。根詰めて観るというより、流して観るのがよい。