川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

千葉市ゆかりの家・いなげ

台風一過、四方どこを見上げても入道雲がもりもりと湧いている。気がつくと、千葉市稲毛区の水路沿いを歩いていた。早くも額から汗が垂れてくる。念のため書いておくと、今や都道府県のうちで人口が増加しているのは6つか7つに過ぎないのだが、千葉県はそのうちのひとつで、千葉市には97万余りの人間が住んでいる。稲毛区は16万1千人の人口を有する。

小中台南小学校。右にプール。近辺の住居表示が「小仲台」とあったが、何かあったんだろう。歴史的な変遷か。f:id:guangtailang:20180729194311j:plain

左手前に水路。その向こうに第2稲毛ハイツ20号棟。この先で他の水路と合流している。水路の上にやたら鉄骨が渡してあり、水もきれいとは言い難いが、柵越しに水辺(すいへん)を覗いているとカモの親子がいたり、カメがいたり、コイがいたりした。f:id:guangtailang:20180729194358j:plainf:id:guangtailang:20180729194503j:plainf:id:guangtailang:20180729194600j:plain

京成線のガードを潜る。それで左手の線路沿いを京成稲毛駅に向かって南下すれば、「千葉市ゆかりの家・いなげ(旧武見家住宅) 愛新覚羅溥傑仮寓」は近い。f:id:guangtailang:20180729194648j:plain稲毛浅間神社の一角にそれはある。駅前から交通量の多い通りをまっすぐ進むのだが、途中、左側にソープランドの看板があり、そちらを見やると路地奥の引っ込んだ場所に古ぼけたビル。昭和の匂いを残す店舗。「総額15,000円」の表記。

地味な案内板をたよりに細い路を入ってゆく。f:id:guangtailang:20180729212118j:plainf:id:guangtailang:20180729212203j:plain

木造平屋建瓦葺の純和風建築。玄関を入って声をかけると、下の間取図の食堂や浴室がある方の廊下からおじさんが顔をあらわし、「どうぞご自由にご覧下さい」と言って、すぐに引っ込んだ。見学無料。撮影も全然OKだ。

二間つづきの8畳間の手前から庭を眺める。草木が微風にそよいでいるのだが、小生の躰は汗みずくだ。f:id:guangtailang:20180729213505j:plainf:id:guangtailang:20180729213549j:plainf:id:guangtailang:20180729214206j:plain

二間つづきの8畳間を抜けて進んだ奥の洋間。この裏手に離れがある。f:id:guangtailang:20180729214411j:plainf:id:guangtailang:20180729215313j:plainf:id:guangtailang:20180729215927j:plain昭和12年(1937)、ふたりが新京(現長春)に渡るまでの半年ほどをこの地で過ごしたという。

f:id:guangtailang:20180729221058j:plainf:id:guangtailang:20180729221151j:plainf:id:guangtailang:20180729221247j:plainf:id:guangtailang:20180729221420j:plainf:id:guangtailang:20180729221519j:plain

離れ。f:id:guangtailang:20180729221609j:plainf:id:guangtailang:20180729221818j:plain

f:id:guangtailang:20180729222040j:plainf:id:guangtailang:20180729222130j:plainこの朱旭氏は素晴らしい俳優だ。現在90歳近い高齢だと思うが、小生もドラマ『大地の子』(山崎豊子原作/1995・1996)で、主人公陸一心(上川隆也)の養父役を演じているのをみて、瞠目した。瀋陽出身だから、写真でわかるように180を超す上背がある。それと『大地の子』でいえば、上川隆也氏が当時、中国語のセリフを丸暗記してドラマに臨んだというのは今でも信じ難い。というか、今余計に信じ難い。役者の凄さというものを見せつけられた感じだ。山崎豊子は陸一心役としてモックン(本木雅弘)を希望していたらしいが、上川氏の演技を観終わって、のちに「上川でよかった」とエッセイに書いたらしい。f:id:guangtailang:20180729224232j:plainf:id:guangtailang:20180729225413j:plainf:id:guangtailang:20180729225732j:plain見学しているあいだずっと小生だけだったので、随分ゆったりしてしまった。腹も減ったし、京成線で千葉駅まで出て何か食べよう。帰り際に来館者名簿をみると、本日初めての客だったようだ。名簿のいちばん上にペンを走らせるが、汗で腕が紙にくっついてしまう。玄関脇の廊下に向かい「ありがとうございました」と一声かけて、辞した。