川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

雨の四谷

友人たちと四谷の牛たん専門店へ。この店は食べログ等でも話題になっており、富田林出身のJが予約を取ってくれたのだが、メンバーが揃うまで店先で待ち、揃った順に席に案内される仕様だ。相席などを調整するのだろう。それほどまでに次から次、客が来る。

野太く黒い古民家風の梁が渡された店内でさまざまな牛たんを食らう。ゆでたん、たんシチューはとてもやわらかい。白菜のお新香はさっぱりとして、枝豆は新潟弥彦産。J以外のメンバーを紹介すると、現在北九州で4年越しの単身赴任をつづけている榛原出身のSP。池袋で働くウイグル人のような風貌のF。今年だけで14回の北海道日帰り出張をこなしている豊洲在住のKである。

私は今月、福岡・佐賀にひとり遊ぶので、美食家のSPに呼子イカはじめ、博多のうまいものをいろいろと教えてもらった。東京はそれほどでもないから暢気にしているが、現在、西日本を中心に大雨が降りつづいており、九州北部もその地域のひとつだ。

「烏賊のお店に行く際は生け簀のある専門店に行きなさい。なぜなら、生け簀のない店は当日明け方の漁に行けるかどうかで仕入れが決まるから。つまり、前日雨だと仕入れなしです」。「私は烏賊を食べる時は必ず店に電話して、仕入れを確認します」。そんなアドバイスもSPから。

時期的にちょうど重なった博多祇園山笠の様子も聞き、子供山笠の少女の締め込みについて博覧強記のFもコメントする。

Kの息子が言葉を覚え始め、『きかんしゃトーマス』の登場キャラクターについて好みを示す話は微笑ましい。

Jが多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra」の性能をしきりに褒める。試しにやった「あなたはどうして僕のお腹を触るのですか?」の中文翻訳はほぼ完璧だった。「私は烏賊を食べる時は必ず店に電話して、仕入れを確認します」の露語翻訳はどうだろう。

f:id:guangtailang:20180706085636j:imagef:id:guangtailang:20180706085652j:imagef:id:guangtailang:20180706085710j:imagef:id:guangtailang:20180706085723j:imagef:id:guangtailang:20180706090141j:image2軒目はあらかじめKが調べてくれていた焼き鳥の店へ。案内されたのが店の奥の狭苦しい階段を下った地下倉庫のような場所。「こんなん、カタコンベやん」とJがにやにやして言う。コンクリート床の8畳ほどの空間、壁面の棚にワインが寝かされている。ウイスキーのメニューを見たKとFが安いよね、と言い合って、スコッチ・ウイスキーをオーダーした。

W杯ロシア大会の話から、さっきの北九州を引きずって、ギラヴァンツの語源は何か、という問いが誰からともなく発せられる。Jリーグのクラブ名によくある、何かと何かの掛け合わせ、そうだとしてそれは何か。博覧強記のFも知らず、皆酔っていたため、その問いは中空に消えていったが、あとで私が調べたところによると、「ギラヴァンツ(Giravanz)はイタリア語で『ひまわり』(北九州市の市花)を意味する "Girasole" と『前進する』という意味の "Avanzare" を組合せた造語である」(Wikipedia)とのことだ。

ウルグアイ代表のユニフォームのみが身体に沿うようにぴっちりとフィットしており、胸筋が浮き出て、あれは一体どういうことなのか、とりわけエディンソン・カヴァーニは凄い、というような話もあった。

雨の四谷、木曜日の夜だからして、10時半頃、駅でそれぞれの方向に解散。私は傘を携帯せず、自転車だったので、最寄駅から家まで濡れた。果たして梅雨は明けたのか。

【追記】

夕刻、福岡、佐賀、長崎、すなわち北九州地方に大雨特別警報が発令された。「これまで経験したことのない大雨に」、「重大な災害が迫っており」、「直ちに命を守る行動をとること」を奨められるほどのレベルの警報だ。自分が近々行くからということもあり、その地域が俄然心配になってきた。