川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

小田原文学館、のち下曽我

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f:id:guangtailang:20180603183005j:imagef:id:guangtailang:20180603183023j:image小田原文学館を庭側から。海に近い静かな住宅街の中にこじんまりとある。元々は土佐藩郷士で、明治維新後は警視総監や宮内大臣を歴任した伯爵田中光顕の別邸として建てられた。

f:id:guangtailang:20180603184632j:plain入口側から。

f:id:guangtailang:20180603184841j:plain1階サンルーム。

f:id:guangtailang:20180603185317j:plain3階休憩室。

f:id:guangtailang:20180603185457j:plainf:id:guangtailang:20180603185552j:plainf:id:guangtailang:20180603185646j:plainf:id:guangtailang:20180603185735j:plain3階テラスからの眺め。スペイン風の瓦が特徴的である。展示室は撮影禁止だったが、瓦が1枚で触れるようになっていたので持ち上げてみるとかなりの重量だった。川崎長太郎が掘立小屋でビール箱を机に執筆する白黒写真などあって、撮りたかった。

f:id:guangtailang:20180603190323j:plainf:id:guangtailang:20180603190434j:plainf:id:guangtailang:20180603190530j:plain敷地内にある尾崎一雄の書斎。今回訪れて気がついたのだが、下曽我の尾崎邸をそのまま移築したわけじゃなく、あくまで書斎部屋を中心に部分的に移築したものだ。調度品はじめかなりいい味を出している書斎なのだが、こちらも撮影禁止。傍らに女性服務員がいるので、こっそり撮るのも憚られた。

尾崎と2番目の奥さん(松枝夫人)が梅の実を天日干しする白黒写真が飾られていたので、傍らに立つ服務員に、「尾崎さんはやはり小柄なんですね。奥さんが大柄だったというのもあるかも知れないけど」とふたりを掌で示しながら言うと、「これですと一雄さんは屈まれていますので…。まっすぐ立った写真がないものですから」と言う。変だな、と思った。本館の展示室に下駄を履いて散歩中の、直立した写真があるではないか。「父方のおじいさんは随分大柄だったみたいですね」と重ねると、「骨格が似るということもあるかも知れませんね」と、これもへんてこな応えだった。私は趣きのある書斎が撮影できないことで、傍らの女性服務員に少しいじわるになっていたかも知れない自分を恥じて、あとは無難な会話に終始した。

f:id:guangtailang:20180603194626j:plainf:id:guangtailang:20180603194712j:plainf:id:guangtailang:20180603213510j:plain西湘バイパス越しの御幸の浜。午後の陽射しが強烈で、額から汗が滴り落ちてくる。駅に戻って構内のドトールで黒糖アイスラテと曲げ反りレタスドッグ、チーズトーストの簡便な昼飯。900円。

f:id:guangtailang:20180603195034j:plainf:id:guangtailang:20180603195117j:plain小田原から東海道線国府津まで2駅。ここから御殿場線下曽我へはたった1駅。それだのに、14:40まで電車がない。「…国府津駅から御殿場線というローカル線が出ているが、これはもと、東海道本線の一部だったのが、昭和九年、丹那トンネル開通と共に本線を現在の線に譲り、はかないローカル線に転落した」(尾崎一雄「単線の駅」)。

f:id:guangtailang:20180603195920j:plainf:id:guangtailang:20180603200016j:plain下曽我で下車すると、格段にローカルの度が増す。改札もSuicaが対応しておらず、駅員が手動で精算。「帰りは券売機で切符を買って下さい」。

f:id:guangtailang:20180603205606j:plain尾崎一雄の祖父の代まで神官を務めていた宗我神社、一の鳥居。

f:id:guangtailang:20180603210033j:plain一の鳥居をくぐった右手にこの文学碑はある。文章は「虫のいろいろ」から採られた。

f:id:guangtailang:20180603211828j:plainf:id:guangtailang:20180603212122j:plain坂の途中から一の鳥居を見下ろす。その向こうに小田原の街が見える。

f:id:guangtailang:20180603212538j:plainf:id:guangtailang:20180603212716j:plain歩き過ぎて疲れたので、帰りは新幹線で寝ながら帰宅。3,910円。東京~小田原、距離にして80数km。遠過ぎもしないし近過ぎもしない。海と山が近い、きらきらして程良い規模の街だ。明治の元勲らが屋敷を構えたのもわからなくはないな。

今日はいいお天気で肌も焼けたが、梅雨入りが間近。

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