川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

光ってみえるもの

けっこう長い付き合いのある土浦在住の保険外交員N氏と今朝も少し茨城の話になった。汗をかきかき、白の開襟シャツであらわれた彼は、この暑い日に私がブレザーを着てネクタイを締めているのを、持ち前の大きい声で快活に指摘した。実際、これは私の癖というか、ノージャケットノータイでいるのはどうも落ち着かない。別にことさらビシッとしたいわけじゃなく、オフの時間と区別するために鎧うような気持ちなのだ。それに私はさほど暑がりでない。

明らかに行き過ぎた都心のマンション建設ラッシュへの憂慮が話頭にのぼる。そこから流れて、N氏が豊洲の顧客からタワーマンションの上層階に招かれた話。「僕のような木造二階建てのほか住んだことない人間にとっては、ああいうのは別世界というか、住めないですね」と彼が吐露し、「豊洲の変貌した街並みにも馴染めないでしょう」と私の父親が応じる。「土浦の郊外なんかだと平野に民家が点在している感じで、そっちの方が落ち着きますか」と展開すると、そうなんですとN氏が笑った。

「さきほど、趣きと言ったんですが」とN氏がつづける。実は彼は現在、筑波大学の研究者とともに八郷地区の古民家再生のプロジェクトに携わっており、そういうこともあってオンの時間は都心で動き廻っているが、景観の「趣き」というものに考えが進むらしい。それで茨城でも以前から妙に気になるのが、ソーラーパネルだという。30年くらい前まで筑波線という、土浦~岩瀬(桜川市)間を縦走する鉄道路線があった。その廃線跡がサイクリングロードになっていて、趣味が自転車のN氏はよく走りに行く。その際に往路は右手、復路は左手に見える筑波山の中腹より下のあたりが池面のように光ってみえる。最初はなんだろうと思っていたが、そのうち山肌を削った場所にソーラーパネルが敷き詰められているのが判った。あとで調べたら、設置に際し、無許可で業者が樹木を伐採しているケースもあり、景観・環境破壊で地元住民による反対運動も起きているという。さらには、このソーラーパネルの耐用年数が20~30年で、有害物質を含むため、数十年後の産業廃棄物としての処分コストが半端じゃないらしい。

私も茨城方面によく行くので、ソーラーパネルのことは知っていた。やはり、最初は何かと訝しんだが、判ると同時にえげつないことするなあ、と思った。茨城にも様々な地域があるが、よりによって筑波山でこんなことするかねえ、と。今では市側も本格的な対策に乗り出しているようだ。ちなみに、宝篋(ほうきょう)山の「篋」は難読だな。