川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

ゾーン

昼頃までひどい雨が降っていたが、そのあと急激に晴れた。午後6時、仕事を終えて、今日はひとりの晩飯なので、スーパーへ買い物に行った。おれの住んでいる地域は23区には案外珍しい大規模に再開発された、いわゆるニュータウンで、子供が多い。仕事をしている地域はそんなに離れていないのだが、こちらは老人ばかりで、好対照をなす。

ちょっと早めの夕方にニュータウンを走っていたら、雨上がりの草いきれがむんむん匂ってきて、思わず自転車を停めて緑を眺めた。季節が2箇月進んだ先の黄昏に佇んでいるような、そんな錯覚に陥る。いつにもまして子供が多い。スーパーの入口で3歳くらいの女児が、不釣り合いに大きい買い物カゴを持ってきょとんと立っている。その後ろでは同い年くらいの男児が泣き叫んでいる。奥では陳列棚のあいだを走り廻っている子供たちもいる。親たちは買い物に熱中しているのだろう。ちょっと鬱陶しいなあと感じつつも、現代日本の、この人口減少、少子高齢化社会において、こんなにも子供たちが存在している空間は、言祝ぐべきなんだろうと思う。めでたいのだ。

先程のおれの働く地域は生活保護受給者が多く暮らしていて、天涯孤独みたいな老人ばかりだから、そういう人たちと日々接していると、一個の生(すなわち未来が)どんどん細まっていくのが如実にみてとれる。それはやはり、いたましい。おれ自身が40を超えたころから軀に不調もあらわれて、ニュータウンの子供たちより、どちらかといえば老人たちのゾーンに足を踏み入れつつあるという実感がある。とはいえ、おれは意気阻喪しているわけじゃない。これはある年齢生きれば、誰もが通るゾーンだからだ。むしろ、そこまで生きてきたのかという感慨がひたひたと押し寄せてくるくらいだ。

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