川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

あじの干物とスローモーション

出入りの水道工事業者の社長が日曜日に日帰りで下田に行って、あじの干物を買ってきたと、そのうちのいくらかを分けてくれた。ここのあじ、小さいんだけどうまくて、おれはここのじゃないとと思ってるんですよ。父親と私が日帰りということに驚き、それだと片道200km、往復6時間はかかるのではないかと問うと、そうだと余裕の表情で頷き、他はどこにも寄らなかったという(厳密には同行した友人を相模原で降ろした)。今日の昼に自宅に戻って食べたが、たしかにうまかった。魚焼きグリルが自動で焼くのだけど、ちょっと焦げが強いな。

下田といえば私が高校生の頃、夏休みに家族で連泊し、ある夜に私が単独行動をして年上の女に誘惑された思い出深い場所なのだが、年上の女といっても当時たぶん30手前位で、今の私よりひと廻り以上下なのだから、月日が経つのは早い。高校生の私は水泳で鍛えた逆三角型の軀をして、肌がこんがり焼けていた。

唐突だが、私は映画やテレビドラマのスローモーションが好きではない。なぜかといって、スローモーションで別になくともいいシーンで意味ありげに使ったりするが、必然性がなく、だから効果的でなく、かえって非常に薄っぺらな印象を受け、白けることが多いからだ。しかしある映画の中で、こ、これは…!!と、震撼するくらいここぞという時に使ったスローモーションがあり、それは『天城越え』(三村晴彦・1983)である。ラストのどしゃぶりの雨に佇むハナ(田中裕子演じる)にスローモーションがかかるのだが、これは本当に許せる。

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