川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

「わびしさ」について

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f:id:guangtailang:20180407215045j:plainf:id:guangtailang:20180407215122j:plain北とぴあの空中回廊。2007年11月撮影。

f:id:guangtailang:20180331171031j:image「東十条の女」。いいタイトルだな。そこはかとないわびしさが漂っていて趣きがある。私は東十条駅で下車したことはないが、王子と赤羽のあいだにある、東京北部の駅だということは知っている。素子さんが東十条の駅からけっこう歩く、1970年代に建てられた一軒家の一部を間借りしているのもわびしいし、そもそも『魔法使いサリー』のよっちゃんに似ているというのがわびしいと言えばわびしい。私は肯定的に言うのだが、昭和の、地に足のついた「わびしさ」である。そこには生々しい現実味が備わっている。そして、彼女は性交において優れているのだ。このことも妙なリアリティを醸している。著者の「ポリアモリー期」を素子さんに照準して描き出したのは成功だ。それにしても、この著者の書く小説は初めて読んだが、非常にリーダブルな文章を書くのだな。本の装幀がまた昭和のわびしさをシンボリックにあらわしており秀逸。

事務所の入口脇のムスカリが可憐だ。「花言葉は、寛大なる愛、明るい未来、通じ合う心、失望、失意と、まるで正反対の意味がある」(Wikipediaより)。