川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

壁打ち

f:id:guangtailang:20171206134406j:plain2008年12月20日、首都高7号小松川線高架下。クリスマスを数日後に控えて、孤独にテニスボールを壁打ちする男。この一帯は錦糸町のラブホテル街である。別段スポーティな格好をするでもなく、ラケットを振る姿に活力も見られない。また、この場所が壁打ちに相応しい場所とも思えない。彼は相手のいないクリスマスイヴを過ごすだろう。

ひとつ憶えているのは、大学時代の友人に連れていかれた西荻窪のバーで、そこのマスターが山梨県道志村の民宿の倅だった。その頃私はテニススクールに通っており、友人がその話を彼に振った。道志村といえば全国でも有数のテニスコート保有数で、実家が民宿であれば当然テニスコートやキャンプ場を備えていただろう。しかし彼は、テニスなどやる輩はミーハーな軟弱者と考えている人で、露骨にそういう表情は表さずとも、内心嘲笑したようだった。この時、私は少しも腹など立たず、むしろ、そうだよな、なんでおれはテニスなんかやっているんだろう、そんな人間じゃないよなと自省してしまったのだった。