川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

上海(朝)

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この辺り、租界時代には日本人居住者の盛り場として賑わっていたらしいが、再開発により往年の面影は無い。ただ、1933老場坊は当時工部局が建設した屠殺場で、強化コンクリートでつくられた内部の迷路のような異様な空間をそのまま活かして、現代のお洒落スペースとなっている。

入口左脇のスタバに入って休憩。Hさんが「見てみて。若者ばっかりでしょ。日本だったら老若男女が星巴克(スタバ)にいるけど、上海も日本とは違うね」と言う。なるほど、店内を見廻すとパソコンを開いて長居しているような学生数人、20代の女性同士数組、あとは30代くらいのスーツを着た男で、我々がいちばん年長らしい。大陸は相対的にスタバ飲料の価格が高いが、それ以上に年配者に咖啡文化が根付いていないのだろう。年寄りは茶を飲むのだ。Hさんの親族のひとり(60代)に咖啡を飲ませたら、「こんな変な味道のもん、飲めるか」と吐き出されたのは、私の記憶にも新しい。

f:id:guangtailang:20171114103208j:plainf:id:guangtailang:20171114103325j:plainf:id:guangtailang:20171114103506j:plainf:id:guangtailang:20171114103606j:plainf:id:guangtailang:20171114103704j:plainf:id:guangtailang:20171114103813j:plain月曜日の朝だからか、妙にひっそりしていた。まあ、こういったお洒落スペースは往々にしてこんなものかも知れない。

f:id:guangtailang:20171114104238j:plainf:id:guangtailang:20171114104642j:plainf:id:guangtailang:20171114104753j:plainf:id:guangtailang:20171114104931j:plain外白渡橋の上から外灘から、やたら婚紗照(結婚記念写真)を撮影していた。私もハルピンで撮ったことがあるが、屋外ではなくスタジオだった。これでもかというほどカラフルな黄色のスーツに身を包み、ポーズをとったものだ。日本であのスーツはお笑い芸人が舞台で着るやつだ。

あっという間に2日間が過ぎて、やっと軀が上海に慣れてきたのに、せめてあと1週間いさせてほしいと思った。しかし、それは今の私の環境が許さない。Hさんはまだしばらくいて彼女の仕事を一段落させるらしい。

蘇州河といえば、上海出身のロウ・イエ(娄烨)監督の『ふたりの人魚』(2000 原題『苏州河』)が傑作だった。上海の煌びやかな場所を少しも撮らず、物語は蘇州河沿いのうらぶれた一帯で展開する。『パープル・バタフライ』(2003)もそうだが、ロウ・イエの上海はやたらどしゃ降りの雨が映し出され、こんなに雨が多い場所なのかと錯覚させる。そして、雨の他にネオンサインがよく出てくる印象がある。これも決して派手なものではなく、ぼわんと滲む光をみつめていると、むしろ寂しさがそくそくと身に迫ってくる。