川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

高い鼻梁と藪睨み

藤田敏八『八月はエロスの匂い』(1972)をDMM.R18 で。

日活ロマンポルノ、藤田監督のエロス三部作の第一作。冒頭、デパートの宝石売場の陳列のなんとチープなことよ。ここからもう昭和の匂いがぷんぷんしてくる。主演の川村真樹の高い鼻梁、むささび童子の藪睨みの目、これらは印象的だ。売り子と強盗の出会い。ロマンポルノだからして10数分に1回だかの割合で濡れ場があるが、その際、仰臥した川村の鼻の穴のかたちが美しい。

無論、アクアラインは存在しないので、南房総への交通手段はフェリー。クルマを乗っけて東京湾を渡るフェリーが現代の目にはかえって新鮮に映る。むささび童子と行動をともにするヒッピーみたいな弾き語りの男女がいかにも70年代的。最後、川村とむささびが南房総の安宿で三度目の再会を果たし(二度目はレジャーランドの喫茶コーナー)、ふたりして離れの便所から海に向かって歩いてゆく途中に花畑がある。その中でまぐわう。髪を切ってからの川村は老けて見える。女性は髪型が大切だなあとあらためて思った。

他の作品でもいえるけれど、藤田監督は音楽の使い方がとても巧いと思う。

 

池袋の新文芸坐で「没後20年 藤田敏八 あの夏の光と影は~20年目の八月」なる特集をやるようです(8/27~9/2)。『八月はエロスの匂い』もプログラムに入っています。