川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

隅田川

ボタンを買いに(再)

年をまたいで再度ボタンを買いにいった。中古で手に入れた黒のカシミヤジャケットが家にある。これがプラスチックのボタンまで黒で、全体に真っ黒だ。これを変えたかった。 着物姿の若人が散見される雑踏。三宅唱『ケイコ 目を澄ませて』(2022)やヴィム・…

膿を出せ

川の照りと題するならばこういうものを載っけるべきなんだ。午後4時過ぎの隅田川を下流に向かって撮る。西日に照らされて人気もなく妙に静かだ。おれの人生は物心ついた時から隅田川とともにあり、現在もまだ隅田川のそばに在る。初めて訪れた町ですぐに川を…

県境

帰り道、「ここの船、どっち方面行ってるんだっけ?」とMが言うから、「お台場、浜離宮、豊洲…」と答えると、「渋谷の方は行ってないのかあ。行ってたら毎回船でここ来るんだけどな」と冗談のように呟く。「渋谷からは銀座線で来てくれよ。始発─終点なんだ…

四合瓶

昨晩はあまりない出来事ですが、仕事で知り合った女性と高架下の店で飲みました。オミクロン株が世界で増殖している中、日本の現状はそれほどでもなく、師走のイルミネーションも華やいでいますし、この機を捉えて行きましょうよとなったのです。業界組織の…

ウォーキング

昨日は満月だったのだが、また地上の風景を撮ってしまった。JR貨物の広大な敷地。調べれば、東京ドーム5個分なのだそうだ。隅田川駅と呼ばれるこの貨物集積所は北海道、東北、新潟、北陸方面から来る貨物列車の終着駅(始発駅)だという。この付近に長年住…

大地震と映画に関するメモ

10月7日午後7時20分。隅田川。 昨晩10時41分に大きめの地震があった。その時、僕は1階で風呂上がりの耳掃除をしていて、スマホの警報音がけたたましく鳴り、すぐ来た。お、これはかなり大きいやと3階のHさんに伝えに行こうとしたら、声を上げながら向こうか…

川をゆく

昨日の晩は雷が鳴っていた。その時僕は家の2階にいて、夕飯を食ったばかり。階下でHさんとモモさんのお喋りする声が聞こえる。そのはざまにいかずちが聞こえてきた。それで自転車で錦糸町から来たモモさんは帰るのを早めることにした。雨はちょっと降ってい…

サスペンダースカート

台風本体が徐々に関東に近づいてきて、外はドシャ降りだ。以前からこの日ちょろっと会う約束をしていたシーシー氏に「飛行機飛ぶの?」とラインで送る。ほどなくして「どうなんですかねえ」と返ってきた。「じゃあ、とりあえず羽田行くわ」と送る。彼と会う…

ラブラドールの貌

台風か温帯低気圧が接近しているから土手を吹く川風は強めだった。プロムナードまで下りていくとさらに強く、お帽子を飛ばされぬよう後頭部のバンドをきつく締める。マスクをとってもこの場所なら構わない。Hさんは北関東の道の駅で買ってあげた蝙蝠Tシャツ…

高速高架下音頭

夕飯のあと、ウレタン敷きのジョギングコースを歩く。今夜は川向こうの高速高架下に提灯の連なりが見え、そこから音楽が流れてくる。振り向くと、Hさんが立ち止まって向こうに目を凝らしている。興味あるのと訊くと、あるよとそのまま踵を返して橋を渡りそう…

羊肉串

午後7時過ぎ、Hさんとウォーキングに出る。週4~5日ペース。昨晩は彼女とのあいだで修羅場が出来し、ふたりともろくろく寝ていないが、夜が明けて、つとめて平常にルーティンをこなす素振りを見せたから、私もそのように接し、過ごす。 日々是好日、すべて世…

京浜東北線

『風と共に去りぬ』は第5巻も終盤421頁まで読んだ。読了したら引き続き『謎とき『風と共に去りぬ』』に移るつもり。壮大な話は結局、スカーレット、レット、メラニー、アシュリの4人に収斂していくんだけど、これはなんて言うか、圧倒的な小説です。5日午後…

我的功劳

『風と共に去りぬ』は最終第5巻の150頁まで読んだ。昨晩帰宅すると上海人のおばさんがキッチンに立っていた。例の人だ。Hさんの知り合いで上海人のおばさんというのは何人かいるのだが、その中で私にいちばん親しく接してくれる人。茨城方面に一緒にドライブ…

ブルーグレイ

『風と共に去りぬ』は第4巻の339頁まで読んだ。夕食後、日課のウォーキング。時刻は午後7時過ぎだったが、まだ明るさが残っている。これがあと20分もすれば暗くなる。といって都会の空だから暗闇になどならず、ブルーグレイに薄い雲がたなびいている。ただ、…

薄闇の広場

『風と共に去りぬ』は第3巻の371頁まで進んだ。この鴻巣友季子さんの翻訳は先行するそれと比較されて毀誉褒貶の多いものらしいが、おれは全然気にならないな。スカーレットのアイルランド魂、直情径行、リアリストぶりがよく描かれているのじゃないかしら。…

西瓜

久しぶりに川の照りと言っていいものを撮りました。隅田川沿いの土手、ウレタン敷きのジョギングコースより。ごはん時に行ったからか、不思議に人がいませんでした。向かって左寄りのビル群は荒川区、川の向こうに渡れば墨田区、川に架かる橋の後方は足立区…

官能烏龍茶

埼玉県立川の博物館、〝荒川大模型173〟の源流の山々。数字は荒川の総延長距離(173km)だそうだ。 午前9時台に出発としようとしたが、突如バケツをひっくり返したような大雨になった。マックスにしたワイパーも役に立たず、フロントグラスの向こうに何も視…

風のバルコニー

6日。炎天下の外回り。キャップをかむり、顔の半分をマスクで覆っている。さらにメガネをかけているわけだからほとんど変装の領域で、お客や知人に出くわし挨拶をしても誰だかわからないようだ。キャップのイメージがわたしに対してないだろう。こちらが自転…

流星のように

潤一郎の未完小説「鮫人」(1920・大正9)を読む。バルザック的大作を目指して書かれ始めたとも言われるが、物語が進むほど散漫になり、深夜の浅草の描写で途切れた。同年、潤一郎は横浜の大正活映株式会社文藝顧問に就任しており、そっちが忙しくなったとか…

亀裂

早めの夕食を食べ終え、ウォーキングに繰り出す。ここ数日は低調で、トドメが昨日だった。仕事上の否応ない作業の一環で、駐車場の端に吐かれたゲロのような物体を片付けなければならなかった。午後の強い陽光が照りつけるなかでまず現場を確認するが、すで…

橋の上、日没、エレファントスキン

橋の上。墨田区、荒川区、台東区の境界。Hさん言うところのイェウスパ、すなわち業務スーパーへ買い物に行く。酸菜鱼をつくるため。神戸物産も神戸屋と同じで神戸市にあるわけじゃないようだ。そうですか。 ボーネルンドの紅いフリスビーを買ったので、夜、…

丝绸之路①

17日、晴天。気温も30℃近くありそう。思いつきでバドミントンのラケットとシャトルをリュックに詰め、荒川(放水路)の河川敷に行く。 なんとなく予想はしていたが、シャトルが風に流されて、思う場所に全然飛ばない。まともに打ち合えないからHさんもうん…

青空美容院

二三日前。晩飯を食べ終わり、隅田川沿いを浅草方面に向かって散歩する。こっちは久々に来たが、ブルーシートの段ボールハウスがかなり減った印象。それでもHさんは讨饭的人(タオファンダレン)に妙に興味を持つ。以前、餓死しないのかと心配げに言うから…

連休中の本と映画、それは満洲とロマンポルノです。

何日か前、ツイッターで目にした記事で、長野県が県外ナンバーのクルマの実態調査に乗り出しているというのがあった。写真が載っており、背に「長野県建設部」とある赤いベストを着た職員が、道路脇のパイプ椅子に座って往来を走るクルマを監視している。連…

アナウンス

26日。都知事は買い物するのなら3日に1回にしてほしいと要請しているようだが、我が家は大人ふたりなので2日か8日に1回と決めている。今日は自転車にリュックを背負い、1週間分の買い出しに行った。必要な主菜・副菜を買って17,000円くらい。スーパーの中で…

引っ越しを数える

昼。自宅で老干妈を混ぜ込んだチャーハン。食後、諸曁(浙江省绍兴市诸暨市)の緑茶を飲む。 先日の小旅行の際、車窓を流れる景色の中に昭和の趣きを見つけ、友人Jが「団地に住んでたなあ…」と呟いたのを皮切りに、今までに引っ越した場所を言い合い、数え…

隅田川のピクチュア

『順子わななく』(武田一成・1978)をFANZA動画で。この監督はロマンポルノを超えてもっと知られていいと思うのだが、Wikipediaの頁もつくられていないし、FANZA動画やDVD等で観られる作品もそれほど多くはない。好きな監督だけに残念なことだ。最近、阿佐…

口罩

夜。隅田川を渡り、地元の和食レストランへ。今日、Hさんは東京入管に5時間半滞在した。これはラグビーの試合が4試合まるまる入るほどの時間である。結果、3年の在留許可が下りたわけだが、彼女の心身の疲労を考えて外食に誘った。私も交付の窓口までは一緒…

海藻のように

夢をみた。川沿いのマンションに僕と弟とふたりで住んでいる。内装・設備は質素で、1970年代後半か80年代初頭みたいな趣きだ。われわれの年齢もどうやら若い。20代後半のよう。ベランダから見える川は明らかに隅田川で、眺められる高さと角度が、かつてほん…

猫の額

家の向かいの建売住宅の工事が終わりに差し掛かっている。木造3階建だから工事期間中も不快になるほどの騒音や振動はなかった。前面の狭隘道路にトラックが停まりぱなしになるのは鬱陶しかったが。この建売の右隣りに古ぼけた木造2階建の家屋があり、昔から…