川、照り映え

隅田川沿いに住む壮年が綴る身辺雑記

壮年の衰え

ぼんがぼんが

あけましておめでとうございます。應嘉麟(应嘉麟 イン・ジァーリン)です。私は泳ぐことが好きです。生まれてこのかた、脚をぼんがぼんが動かすことが好きです。気持ちいいから。ベッドの足下に備え付けられた玩具のスイッチをぼんがぼんが押すと点滅して音…

みずうみ

大晦日。午後、牛乳を切らし、買いに出る。防寒にエディ・バウアーのダウンジャケットを羽織り、中はパジャマ、裸足にスエード靴という珍妙な恰好である。近所の寂れた商店街に並ぶ書店は今日も開いている。ここには品揃えというほどのもないのだが、文庫本…

骨折の夢

23日午後12時30分。錦糸町にて漬け白菜と豚肉の炒め。壁に貼ってある写真では黑木耳(ヘイムアル・きくらげ)の刻んだのが入っているが、これをたのんで今まで入っていたことはない。黑木耳は家でよく食べているからまあいい。米の量を少なめにしてもらう。…

築53年の部屋

6日。以前、百貨店共通商品券15,000円分をファさんにあげたのだが、それを使って池袋で買い物するというのでつきあう。もうすでに疲れるような予感がする。そのかわり、昼に羊肉串を食うぞと僕は言う。例の火焔山だ。駅についたのが昼時だったので、そのまま…

十二月また來れり。

師走か。一体なんだったんだ2020年。去年のラグビーW杯を遠い昔のことのように感じる。あの、台風一過の横浜で行われた運命の日本対スコットランド戦。あれほど心震える試合もめったになかった。 以前に言及したことがあるが、自宅の真ん前で計画されている…

烏の濡れ羽色’71

父親の昔話。以前にも言及したことがあるが、私の父方の祖母は勝浦の出身である。それで父親が大学生の夏休み─今から半世紀も前のことだが─に興津の親戚の家にアルバイトに行っていた。海沿いのその家の庭はかなり広く、海水浴客の駐車場として終日500円で貸…

まあ12000歩

今日は昼間だけで12000歩ウオークした。まあ人によってたいしたことのない歩数であり、たいしたことのある歩数だと思う。先月あたりから夜の散歩に出なくなったのは、ファさんが寒いのを嫌ってのことだが、抄太郎いちにんで出かけてもいいわけで、それもしな…

壮年の倦怠 ─80年代初頭─

28日。80年代映画の企画上映、今日で終わった。5本観たら1本無料になるからそのつもりで観ようと、スタンプカードももらって意気込んでいたが、数日前に熱中症の初期症状を発して、断念せざるを得なかった。 外回りに午後を費やし、事務所に戻ると妙に躰全体…

二つの学芸会  6年3組 鶴岡抄太郎

三年生の時、「梨取り兄弟」という物語を学芸会でやった。ぼくはその中でもあまり目立たない沼の主をやった。沼の主とは龍に似ているナマズのような化け物でとても恐ろしい役だった。 ぼくの他に沼の主をやったのはN君とT君だった。 本番に入ってぼくはき…

ドラゴンフルーツいらっしゃいませ〜

ふた月前に池袋で剃り上げられた髪も今は自然だ。頭頂部の薄毛をカムフラージュするため、いずれ側頭部は短くする必要があるが、あれはいかにも短か過ぎた。最近のダルビッシュ風というか、ある種のメジャーリーガーみたいにキャップの後ろからもじゃもじゃ…

お帽子をかむったらいかがですか?

現下の状況で東京在住者が徒らに他県へ赴くことには当然批判があると思う。そういった批判は受け入れなければならない。ただ、わたしがお伝えしたいことは以下のふたつである。いちこめ。みっつの密は極力避けるように行動しています。本日の佐原、銚子行も…

流星のように

潤一郎の未完小説「鮫人」(1920・大正9)を読む。バルザック的大作を目指して書かれ始めたとも言われるが、物語が進むほど散漫になり、深夜の浅草の描写で途切れた。同年、潤一郎は横浜の大正活映株式会社文藝顧問に就任しており、そっちが忙しくなったとか…

おいしいたべもの

くもりときどきあめ。きょうふう。とうきょうはそのていどですんでいますがきゅうしゅうにつづいてぎふやながのでかせんがはんらんしてたいへんです。せんじょうこうすいたいはおそろしい。つゆといえばしとしとあめがふるというふぜいはもうむかしのはなし…

刈り込まれて

21日、晴れのち雨。池袋に蘭州拉麺と羊肉串を食べに来る。ついでに3ヶ月以上切っていないので散髪。思っていたよりも羊肉の片が大きく、食い切れなかった。照片では4本ずつ皿に分けられているが、5本食ったのは私。女は1本の途中までしか食わず、串に残った…

冷蔵庫

昨晩、裸でシャワーを浴びたあとパンツ一丁で読書していると、階下でHさんの大声が聞こえた。何事かなと私はゆっくり起き上がり、バーボンを舐め終わったグラスを片手に階段を下りていった。最近はアルコールを摂取するとすぐに眠くなってしまう。特に昼間…

母校

午後、仕事で高校時代使っていた駅で下車する。何年ぶりだろうと考えて思い出せないが、まあ久しぶりである。ちょうど下校の時間と重なり、若人たちがぞろぞろ向こうから歩いてくる。中学生も高校生もいる。男子も女子もいる。今でも変わっていなければ中高…

黒色のところ

だいぶ以前から冷蔵庫の中にある阿胶糕。わりかし嵩張る箱に入っているから気になる。Hさんに字を教わりがてら、これは何なのかと訊ねてもどうも要領を得ない。ただ、女が食べるモノだと言うだけ。ある時、包装紙を剝いて試しに私もかじってみた。むやみに…

引っ越しを数える

昼。自宅で老干妈を混ぜ込んだチャーハン。食後、諸曁(浙江省绍兴市诸暨市)の緑茶を飲む。 先日の小旅行の際、車窓を流れる景色の中に昭和の趣きを見つけ、友人Jが「団地に住んでたなあ…」と呟いたのを皮切りに、今までに引っ越した場所を言い合い、数え…

倦む壮年

Hさんの西川口の会所が閉鎖され、2週間。まるで家庭妇女(専業主婦)のようだとボヤきながらもひねもす家に留まり、炊事洗濯をやってくれている。たまには運動がてら川沿いの桜を見に行ったり、近所の上海人のおばさんと家を行き来したり、一緒に超市に行っ…

耐雪梅花麗

11日、晴天。高速を走っている時、涙ぐましいブルーの空に白い富士山が輝くように浮かび上がっており、感動した。 越生梅林はまだ早かった。今週末から梅祭りだというが、それでもまだ早いだろう。2月下旬が見頃かしらん。 時間は少し遡り、日高市(人口5万5…

欠落

8月に観たものを12月30日に書く。9月下旬から11月の頭まではラグビーW杯に没入したこともあり、対スコットランド戦の日本のトライシーンはめざましく思い出せるのだが、このTVドラマは記憶が曖昧になっている部分も多い。かといって、今もう一度観直す気力は…

飴色をかじる。

晩飯のあと、Hさんの買い物に付き合い、ついでに好物のころ柿を買う。ドラッグストアでは同業者のKに会う。これで二度目だ。来年の初め、彼からある立場を引き継がねばならない。そうゆう成り行きになった。 東京オリンピックの開催がだいぶ先の気がしてい…

ティンブドン事件

月が替わって今年もあと1ヶ月。インプラントの土台は周辺組織と結合しつつあるが、仮歯は来年になってしまうだろう。費用も期間も手順も事前に知ることができても、いざやってみるとまた違った感慨を抱く。ここに至るまで一進一退の攻防もあったが、やる前は…

視力補正器具

雨がびしゃびしゃと降りつづく。Hさんが前からの約束だし、すでに金銭を払い込んだので仕方がないと午前6時に起床し、支度を整え、錦糸町に向かった。伊豆修善寺に行く日帰りバス旅行の出発地らしい。パジャマ姿で玄関に佇むわたしの薄毛に冷たい雨粒が降り…

老いの微笑

19日夜、隣接区同業者団体との会食でローストチキンが出る。どこかなまめかしいかたち。向かいの主催者側の若者が慣れた手つきで肉を裂いていく。こちらは切り分けられた塊をかじるだけで楽なものだ。ジューシーで実に美味。ただ、右側でばかり噛むのはやや…

ぼんがぼんが(する壮年)

今日から8月。旧聞に属するが、中国北方の夏の風物詩、いわゆる「北京ビキニ」が非文明的という理由で当局から規制を受けているという。日本国内では馴染みが薄く、ビーチなどでたまに見かける程度、知る人ぞ知る北京ビキニであるので、どういうものなのか念…

白の、

28日、昼。自宅に戻り、Hさんが西川口で買ってきてくれた猪脚(ぢゅーじゃお 豚足)をかじる。香辛料が効いているがにおいはそこまで強くない。テレビを点けるともっぱら大阪のG20サミット、それから私と同い年らしいスリムクラブが無期限謹慎処分になった…

雨の匂いと血圧

過日の仙台旅行に先輩のT氏が血圧計を持参していた。温泉から戻り、タバコを吸うH氏が窓を50cmほど開けると、ザーザー降りの雨の音と匂いが部屋に入ってくる。やってみなよとT氏に促され、その場にいる4人が順順に手首に計りを巻いた。H氏は上も下も高い…

或る土曜

午後2時。仕事を切り上げ、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019・監督 マイケル・ドハティ)を観るためTOHOシネマズ錦糸町楽天地に向かう。しばらく工事をしていたが、曳舟駅が小綺麗になって新しいテナントがいくつか入っている。たとえば大阪王将…

あらわれた小狗

25日、午後7時30分。日暮里まで戻ってきて談話室ニュートーキョーで弁当を食いながら、空港での出来事をまたひとしきり話すHさん。 時間は午後4時まで遡って、スカイライナーで成田へ向かう。老眼が進み、眼鏡をはずしてスマホを弄る壮年43歳。照り上がった…